朝日新聞が十六日付朝刊に掲載した全国世論調査によると、二十日に自民、公明両党と維新の会などの賛成多数で成立した「カジノ法」について、この国会で「成立させるべきだ」と答えたのは一七%、「その必要はない」が七六%。注目すべきは、安倍内閣を「支持する」と答えた人の六四%が「必要はない」と答え、「成立させるべきだ」の二九%を大きく上回っていることだ。公明支持層では、「必要ない」は七割を超え、無党派層では、反対が八一%に上る。

 小欄でも何度か書いたが、私は賭け事そのものを否定しているわけではない。賭け事、ギャンブル、博打(ばくち)は、表に出てはいけない、裏の遊びだ、と言っている。ついこの間、企業経営者の友人と昔話になって、「そういえば、パチンコに行っていないなあ」「やらなくなって何年になる?」「十年、いや十五年になるか」などと感慨にふけった。また、最近はいささかわけがあって遠ざかっているが、マージャンが好きだ。数あるゲームの中で最も複雑で、奥が深いゲームだと認識している。そして少しでもお金を賭けると面白さのレベルは格段に上がる。私はギャンブルを否定しない。ただ、あくまで裏の遊び。それを「経済」だの「景気」だのと結び付けるのは笑止千万。国が国民を依存症に罹患させ、金を巻き上げる仕組みに加担するということだ。

 安倍晋三応援団を隠さない読売新聞までが、さすがに次のように書く。二十日付の記事を紹介しよう。

 ――国内初の「民営ギャンブル」を可能にするIR(カジノを含む総合型リゾート)実施法が二十日、成立した。ギャンブル依存症対策を事実上置き去りにしたまま、自治体によるカジノ誘致合戦は早くもヒートアップしている。

 IR実施法をめぐっては、ギャンブル依存症への懸念がくすぶったままだ。一連の国会審議を通じ、政府が実施法に盛り込んだ依存症対策の「穴」が次々と明らかになったためだ。(引用終わり)

 記事によると、日本人客から一回六千円の入場料を徴収する。そして「一週間に三回、かつ一カ月に十回」の入場制限を設けるそうだ。月に十回通うと年間百二十回。立派な依存症ではないか。しかも、カジノは営業時間の規制を受けず、二十四時間営業できる。「二十四時間以内」なら入場一回と数えるため、日付をまたげば週六日連続で入り浸り、博打に興じることができる。

 さらに、「胴元」のカジノ業者が入場者に金を貸す仕組みもある。一定額以上の預託金を積めば、借金して博打に金を注ぎ込むことができるわけだ。貸金業法が定める、借り手の年収の三分の一を超えて貸し出せないという規制もない。読売は「入場者が借金漬けになるおそれもある」と書く。これが、安倍首相が「世界最高水準」と胸を張るカジノ規制の実態である。

(工藤 稔)

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