十一日付の朝日、毎日の両紙が、公明党の「立ち位置」や「この先」について社説で書いている。同党の山口那津男代表の六選が正式に決まったのは、九月末に開かれた党大会でのことだから、同じ日の社説に掲げたのは「奇しくも」なのだろう。それだけ、情勢は危機的だという表れなのかもしれぬ。

 朝日の見出しは「公明党新体制 追随だけで先はあるか」。その要旨を書き出すと。

 ――ここ数年で「平和の党」の看板はすっかり色あせ、1強政治の歯止め役にもなれずにきた。現状を反省し、政権内でもの言う姿勢を強めなければ、草の根の有権者の思いと離れていくばかりではないか。

 ――支持母体の創価学会にも異論が多かった安全保障関連法やカジノ実施法も、自民党とともに強行成立させた。森友・加計問題でも、疑惑解明に真摯に取り組むよう、首相や自民党に迫った形跡はうかがえない。

 ――正念場は、首相が意欲を示す改憲への対応だ。ここでも首相に従うようでは、戦後日本の価値観を大切にしてきた党の存在意義が問われよう。

 ――九月末の沖縄知事選では、自公が全面支援した候補が、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する玉城デニー氏に大差で敗れた。公明党県本部は移設に反対しており、支持層の一部が離反したことは出口調査で明らかだ。党執行部はこの結果を深刻に受け止めるべきである。

 ――来年の統一地方選、参院選に向け、首相への追随だけでは展望は開けないと知るべきだ。

 毎日は「公明党の立ち位置は 安倍政治の補完が目立つ」の見出しで、次のように厳しく指摘する。

 ――連立の意味が、自民党の議席を補完する役割から、票の補完組織に変質し、今や安倍政治の補完勢力になってしまっているかのようだ。

 ――昨年の衆院選比例代表では、今の選挙制度で初めて得票数が七〇〇万の大台を割った。長期低落傾向への危機感から組織防衛を優先し、「人間主義」「平和」「大衆福祉」といった結党以来の原点からかけ離れているとの批判は党内にもある。異例の態勢で臨んだ沖縄県知事選は与党候補が大差で敗れた。

 ――安倍首相は憲法改正手続きを急ぐ考えを表明している。山口代表は慎重な立場だが、これまでの連立運営の実績から、自民党は強引に進めようとするかもしれない。公明党は長い連立の経験と知恵を元に、原点の理念を生かせるだろうか。

 翌十二日付朝日、針すなおさんの風刺漫画は、「待て!の廊下」のタイトル。「改憲」の刀を振り回す長袴(ながばかま)の安倍首相の背後から、裃(かみしも)姿の山口代表が止めようとして抱きつきながら、「ズルズルズル…」と引きずられる光景、である。想像していただけるだろうか。いささか長い枕は、ここまで。

(工藤 稔)

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