市長選挙には、新人の今津寛介(41)、現職の西川将人(49)の二氏が立候補を表明し、実質的な選挙戦が繰り広げられている。小欄でここ何号か「関心が薄い」と書いてきたが、告示まで一週間となり、少し空気が変わってきた気がする。選挙カーが走り始めれば、意外に関心は高まるかも知れない。

 先日乗ったタクシーの運転手さんに「市長選挙、どっちに入れるか決めてるの?」と水を向けると、すぐに「いやぁー、迷っているんですよねえ」と答えが返ってきた。六十代後半の男性ドライバーである。「西川さんは、真面目そうだが、十二年やって来て、それほど成果があった感じがしないし、かと言って今津さんの息子は、どれほどの力があるか分からないしね。市長の選挙だから、棄権はしたくない。本当に困るよねえ」と。ちゃんと情報を仕入れて、そして迷っているのだ。

 私の周囲でも、同じような声を聞く。例えば、次のような。

 ――市庁舎の建て替え問題で、西川市長に対して様々な注文を付けてきた。歴史的にも、文化財としても、財政の面を考えても、現赤レンガ庁舎は残して活用するべきだと、私は思う。現職の西川さんは、最初から現在の場所に、赤レンガ庁舎を解体して、新たな庁舎を建てるという方針だった。市民アンケートとか、タウンミーティングとか、パブリックコメントとか、手続きは色々踏んだけど、最初から結論は決まっていたんだと私は思う。だから、西川市政が変わらなければ、市議会も賛成して進められて来た、現在地での建設は、大きく変わる可能性は限りなく小さいだろう。

 一方の今津さんは、庁舎の建設計画を白紙に戻す、と言っている。赤レンガ庁舎も、残して活用したいと明言している。庁舎の建て替え問題だけを取り上げると、私は今津さんを支持したい。だけどね、今津さんは安倍政権の下で衆議をしていたお父さんの秘書だった人だ。「改憲」に執念を燃やす安倍首相を支える自民党の推薦を受けてもいる。北海道第二の都市・旭川で、非自民の現職を破って、元自民党の代議士の息子が市長に当選したとなれば、ただでさえ改憲に前のめりの安倍政権が勢いづくのは間違いない。

 悩みますよね。編集長は、新聞で一貫して西川市政に厳しいことを書いて来ている。それでいて、安倍政権にも厳しいことを書く。平和憲法を守れという立場だと思って私は読んでいます。今回の市長選、編集長は、どうするんですか?

 この「工藤は、どっちに投票するの?」という質問を複数の方から頂戴した。「まさか、西川には投票しないよね」とダメ押しまでされたりして。こうして見ると、タクシー運転手さん的な悩みや迷いを相当数の有権者がお持ちだと推測できるのだ。実際、今津・西川両陣営の選挙に関わっている人でさえ、「今回は、これまでの市長選と違って、予測が難しい」「今津がどれくらい取るか、西川はどれくらい減らすか、読めない」と首を傾げるのだ。四選を目指す現職に対する「飽き」の感覚と、経験則が皆無の新人に対する不安が、拮抗する状況に見える。

 夜半、そんなこんなを考えている布団の中で、突然、「模擬投票をやってみよう」と思い立った。できるだけ異業種、同じ企業や団体に属さない、例えば永山地域に偏らない、あらゆる選挙で「自民党」に投票する人には頼まない、そんな迷える百人の有権者に事前に投票してもらえば、ある程度の投票傾向が分かるのではないか、と。

 発泡スチロールの小さな投票箱と、二人のどちらかにチェックをしてもらう投票用紙を作って、二十五日から持ち歩いている。

(工藤 稔)

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