旭川に巨大なイオンモールが二店舗あるが、一度も店に足を踏み入れたことがない。地元の、極小とはいえ報道機関の末端にぶら下がる者として、それもいかがなものか、と自問する面もなきにしもあらずだが、「行かない、買わない」と決めている。わずかではあるが、私が消費した金の大半が、旭川と近郊の外に流出してしまう、そんな気持ちが強いから。

 いきおいインターネットで買い物はしない。先日、どうしてもネットでなければ手に入らない、三十年前に自費出版された本を偶然ネットで見つけ、息子に頼んでアマゾン経由で買ってもらった。それと十年以上前、燕三条市の刃物メーカーから、干ぴょうを作るために、ユウガオの皮むきを取り寄せた覚えがある。これも、わずかな金でも地元に、という気分からである。

 思い出すのは、ベストセラー『デフレの正体』『里山資本主義』などの著書で知られる、藻谷浩介さんの話だ。全国の市町村を自分の足で歩き、その経験と緻密で膨大なデータ、希有な創造力を駆使して、まちの〝生き残り策〟を提言している方だ。二〇一六年一月と六月、「公立『ものづくり大学』の開設を目指す市民の会」が招いた講演会で、藻谷さんは、「旭川地域の産業に活路を見出すには」として、次のように説いた。

 ――地元産品の消費に努めること。旭川市と周辺町の住民の年間消費額の一%を地元産品の消費にあてることで、年間七十二億円のカネが地元に落ちる。これで二千四百人の雇用が可能だ。ニセコの道の駅で売っているもの全てがニセコ産だ。隣の倶知安町のものぐらい少し置いてやればいいのに、と思うくらい、全部ニセコ産。
 講演会の後のご苦労さん会では、藻谷さんは事前に「地ビールを」と強く要望された。「まちを元気にする活動をしている方たちが、ナショナルブランドのビールで乾杯するなんて、矛盾を感じませんか」と真面目な顔でおっしゃった。

 ひょんなことで『通販生活』が「憲法改正」に反対する姿勢を強く打ち出していることを知った。同誌は、カタログハウスが発行する通信販売のカタログ誌。一九八二年に創刊し、春号、夏号、秋・冬号の年三回発行。各号の商品をまとめた『ピカイチ事典』を年一回発行しているそうな。私の中では、「通販の宣伝誌だろう?」くらいの認識であった。無知は罪である。

 その『通販生活』の二〇一九年春号の表紙が、憲法改正の国民投票のテレビCMについての「意見広告」になっているという。通販のカタログ誌の表紙が、である。

 キャッチコピーは、「こんな不公平な試合だったら、テレビ局は中継しませんよね」。写真は、野球のスタジアム。マウンドの投手が投球動作に入った場面。内野と外野を埋めるほどの野手が守備についている。バッターボックスの打者はどこに打っても、絶対にアウトになる。続くメッセージは。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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