三千人の市民に自らの名前を書かせて当選した市議会議員の方たちは、もっと明確に行政に対してモノを言うべきではないか。時には怒ってしかるべきではないか。


 今号の「議会見たまま」にある総務常任委員会・議員間討議で、計画されている新庁舎の基本設計が大幅に変更された件について、福居秀雄(自民会議)は、「基本理念に示された市民でにぎわうシビックセンターとして、その役割を担うことになっていた市民の活動を支援する機能が大幅に縮小されたのだから、論理的な整合性を図ることが必要ではないか」とずい分ソフトに述べた。

 この言葉を理解するには、新庁舎建設計画について、かなり精通していなければならない。福居議員が言わんとしていることを翻訳すると次のようになる。

 ――新庁舎建設の基本理念は「市民でにぎわい、親しまれるシビックセンター」であった。基本計画には「シビックセンター」の意味として、「市民の多様な活動の拠点となるような場を整備するとともに、市役所を気軽に訪れ、集えるような魅力的な場を整備することにより、市民や住民組織など多くの人々が訪れにぎわう庁舎」「芸術や文化、ものづくりのまちである旭川を内外に発信する機能を整備することで、市民はもとより旭川を訪れる観光客も、旭川の魅力を知ることができる、市のシンボルとしての庁舎」とある。その「シビックセンター」の象徴の一つが「市民活動スペース」だったはずだ。それが「大幅に」縮小される。基本理念との整合性は、一体どうなっているんだ。市長選挙の後、西川市長が「シビックセンター」という文言を一切使わなくなった理由を聞かせろ。(翻訳終わり)

 総合庁舎の建て替え計画は、「破綻」していると言わざるを得ない。その理由が数多あるのは、小欄で繰り返し書いてきた。行政手続き上の無理を押し通して来た結果が、事業の骨格・土台たる「理念」と、完成する成果物がかけ離れたものになる、という無残な結果が待っている。百数十億円の巨費をかけて、次世代に借金を負わせて、である。

 この議員間討議では、「旭川らしさ」が議論になった。金谷美奈子(無所属)が「旭川らしい素材・色を選んだ外観にすべき」と求めると、塩尻伸司(民主連合)が「旭川らしさっていったい何なのか。それは個人によって受け取り方もものすごく違うのでは」と反論した。

 笑ってしまう。市庁舎について「旭川らしさ」を言うなら、現赤レンガ庁舎を耐震改修して残し、それこそ「市民でにぎわい、親しまれるシビックセンター」として活用するのが一番ではないか。建築物としての価値が広く認められ、まちに点在する赤レンガ造建物のルーツになった、歴史的にも価値ある文化財である。それを壊す案に賛成した議会が、「旭川らしさ」を論ずるなど笑止千万、ひょっとしてブラックユーモアかい。断っておくが、金谷は「現赤レンガ庁舎を残せ」と活動した議員の一人だった。

(工藤 稔)

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