過日、中小企業家同友会道北あさひかわ支部(粟田和成支部長)の新年交礼会で、上田文雄・前札幌市長の講演を聞いた。事前の案内にあった演題は「人づくり街づくり―北海道の未来を語る」だったが、当日、上田さんが用意したレジュメには「創造都市さっぽろの試みを題材として」と副題が付されていた。


 一九四八年(昭和二十三年)、十勝管内幕別町生まれ。弁護士。二〇〇三年から三期十二年、札幌市長を務めた。道北の幌延町にある「高レベル放射性廃棄物貯蔵工学センター」計画に反対する市民運動などに関わった社会派弁護士。市長選に立候補した経緯を「お前しかいないとおだてられ、うっかりハイッと答えてしまった」と笑わせながら、市長になってやりたいことは、「自治の深化」「文化芸術の拡充」「教育の場としての札幌」だと見据え、十二年間一貫して「市民の力みなぎる、芸術文化そして誇りあふれる街・札幌を創ろう」を施政方針として掲げ続けたと話した。

 「市民の力」とか、「文化芸術」とか、「誇りあふれる」とか、抽象的な言葉をスローガンにしながら、取り組んだ政策は具体的だった。小学六年生全員を招待する「キタラ ファーストコンサート」、世界の若手音楽家育成と市民に世界的レベルの音楽指導を公開する「パシフィック・ミュージックフェスティバル」、デジタルコンテンツ産業の振興を目指す「札幌市デジタル創造プラザ」の設置、子どもたちの映像教育、商店街や市民が連携し地域活性化につながっている「札幌国際短編映画祭」開催、札幌のブランド力を活かした、少量多品種生産型の「札幌スタイル」の誕生、地下鉄コンコースに「500㍍美術館」や「歴史写真館」をつくる、などなど。

 そして上田さんは言う。「札幌人として、根拠のある誇り(シビックプライドと呼ぶそうな)を持つ。それが街のブランドになる。街のブランドは市民の札幌人気質を形成し、自治力を高め、ひいては経済の活性化につながるのだ」と。行政は市民に情報を提供し、それを共有し、まちの課題に市民が参加する。その積み重ねが自治の深化であり、市民の力みなぎる、文化と誇りあふれるまちづくりに結実する。実に分かりやすい、実際にリーダーとして手掛けた方の実体験に基づく話。胸にストンと落ちる講演だった。

 市庁舎と旭川の未来を考える連絡会(高木百合子代表委員)が一月三十一日、「総合庁舎建設基本設計(案)の見直しに関する要望書」を西川市長にあてて提出した。

 同会は二〇一八年三月に市が発表した基本設計(案)に対して、市民や市民団体に対する説明が不十分だとして同年四月、「基本設計確定の延期を求める要望書」を提出した。市の担当者は「延期する予定はない」と答えたが、六月になって、確定は「延期」となった。

 同会は、同年七月十七日に、①二階に総合窓口を設けるのではなく、一階に市民課を中心にした総合窓口を設置する、②「市民活動スペース」や「集会・会議スペース」は、必要性も含めて再検討を、③一~三階のレイアウトは、市民の利便性や機能、デザインなどを考慮して全面的に修正を、など五項目を骨子とする要望書を再提出した。

 この要望書に対して、市は回答をしないまま、新聞報道(あさひかわ新聞・十二月四日号など)で、基本設計(案)が見直されたことが明らかになる。今回の要望書には、次のようにある。

(工藤 稔)

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