長く旭川を拠点に活動している彫刻家の友人と話をしていて、JR旭川駅が話題にのぼった。高齢化が進む時代の流れに反して無駄に大きい、愛着や親しみが湧きにくい空間、早くここから立ち去りたいと感じる場所、そんなマイナスの評価で一致した。だから、せっかく中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館の分館としてオープンした「ステーションギャラリー」も、いつも人影がまばら。基本設計策定の段階で、大幅な見直しを迫られている新市庁舎の建物も、あのような“居心地が良くない大きな箱”になってしまうんじゃないか…、と。

 十六日付北海道新聞は、市が市議会総務常任委員会で報告した新市庁舎の基本設計の再見直し案について丁寧な記事を載せている(あさひかわ新聞二月十一日号で報道)。正直な感想を言えば、「やっと書いてくれたか…」、あるいは、「もう少し早い段階で書いてくれたら…」である。記事を深く解説する「読み解く」の冒頭と、締めの一節を紹介しよう。

 ――旭川市が「最終案」として示した新市庁舎の基本設計案は、西川将人市長が基本理念に掲げていた「市民でにぎわい、親しまれるシビックセンター」とは大きくかけ離れた姿になった。さまざまな意見に耳を傾けた結果、昨年三月に発表した当初案から大幅な変更を余儀なくされ、理念は宙に浮く格好となった。

 ――シビックセンターの理念は、西川氏が二〇一四年の市長選公約に盛り込んだ。しかし、昨年の市長選では公約から削除した。市議会には「ここまで時間を費やしたので、白紙にはできない」(ベテラン市議)との声もある一方で、「理念が失われた以上、構想の見直しが必要」(自民党系会派の市議)との指摘もある。市にとって「百年の計」とも言える大事業だからこそ、立ち止まって考える必要がある。

 北海道新聞が、新市庁舎建設の報道で「立ち止まって考える必要がある」と主張するのは、私が知る限り、初めてのことである。現総合庁舎、愛称・赤レンガ庁舎を解体しないよう求めて活動する「赤レンガ庁舎を活かしたシビックセンターを考える会」(代表・大矢二郎東海大学名誉教授)などの運動にも、北海道新聞は冷たいとまでは言わないが、温かくなかったと受け止めている関係者は少なくない。「道新がもうすこし、私たちの主張や提案を理解し、記事で取り上げてくれたら、赤レンガ庁舎の解体がこんなに簡単に決まる流れにはならなかったろう」と述懐する会員もいる。

 北海道新聞が「立ち止まって考える必要がある」と書いたのは、物理的に「立ち止まる」時間的余裕ができた背景があるかもしれない。前号の小欄で、国が地方自治体の庁舎建て替えについて、これまでは二〇年度以内に完工した工費に対してだけ措置するとしていた交付税を、二〇年度末までに実施設計に着手した事業にまで対象を拡充する決定をした。約二十六億円の交付金を受けられると同時に、新庁舎建設計画に一年ほどの余裕ができたのである。何も急ぐ必要はないではないか、という訳だ。

(工藤 稔)

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