東日本大震災で亡くなった方たちの政府主催の追悼式が三月十一日、東京の国立劇場で開催されたと翌日の各紙が伝えた。安倍晋三総理大臣の式辞を読んで気分が悪くなった。その一部を紹介しよう。

 ――(前略)原発事故によって大きな被害を受けた福島の被災地域では、帰還困難区域を除くほとんどの地域で避難指示が解除され、本格的な復興・再生に向けて生活環境の整備が進むとともに、帰還困難区域においても特定復興再生拠点の整備が始まり、避難指示の解除に向けた取り組みが動き出しています。

 ――政府として今後も、被災者お一人お一人が置かれた状況に寄り添いながら、心身の健康の維持や住宅・生活再建に関する支援、さらに子どもたちが安心して学ぶことができる教育環境の確保など、生活再建のステージに応じた切れ目のない支援を行い復興を加速してまいります。(後略)

 この方が、沖縄県民に対しても使う「寄り添う」という言葉の意味が分からない。もしかしたら“安倍辞林”では、「寄り添う」は「差別する」「無視する」という意味かも知れない。「知らないふりをすると同義」とあったりして。

 「甲状腺がんの子どもたちの現実と私たちの課題」と題する講演会が十五日午後、真宗大谷派・即成寺(五ノ二十五)で開かれた。宗教や宗派を超えた活動をする宗教者の全国ネットワーク「原子力行政を問い直す宗教者の会」の主催。同会が二〇一一年以来続けている、福島の子どもたちを北海道に招く「北海道寺子屋合宿」の学習会としての企画だ。

 講師は、非営利のインターネット放送局アワープラネットTVを設立して活動している白石草(はじめ)さん。一九六九年生まれ。東電福島第一原発事故を丹念に取材して報道すると同時に、「3・11 甲状腺がん子ども基金」への支援を通して、甲状腺がんを発症した子どもたちの現実に、まさしく寄り添う活動を続けている。白石さんの話の、ほんの一部を取り上げてみる。

 ――福島県内では二〇一一年十月以降、十八歳以下の三十八万人の子どもたちを対象に甲状腺のエコー検査を実施している。甲状腺は、首の付け根に二つあって、ホルモンの分泌、子どもの成長、妊娠・出産に関わることをコントロールしている器官。

 ――現在、公表されている数字は、甲状腺がんの疑いがある子どもが二百七人いて、そのうちすでに摘出手術を受けた人が百七十七人。この数字が信用できるのかが問題になっている。福島県は、甲状腺検査サポート事業を実施している。甲状腺検査の二次検査を受けて治療が必要になった人たちに医療費を提供する制度。昨年十二月の県議会で、「これまでに、二百三十三人の人が支給を受けていて、全員が甲状腺がん」と県側が答弁した。公表されている数よりも多い。この甲状腺検査サポート事業は、十九歳以上の医療費がかかる人が対象。福島県では十八歳以下の子どもたちは全員が医療費が無料だ。だから、少なくても公表されている二百七人よりもはるかに多い、二百七十人とか、二百八十人とかが、がんなのかな…と。私はこのことを記事に書いたのだが、その後、この答弁を修正することになった。実際に何人の患者がいるか、ブラックボックスになっている。

(工藤 稔)

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