今号の市議選立候補予定者に対するアンケートの回答を見ると、市庁舎の建て替えの計画について、明確に「現赤レンガ庁舎を耐震改修して活用すべき」と答えたのは、三人だ。市が二十年以上も昔に行った耐震診断で示された数値「〇・〇〇四」の精度を検証する調査も行わず、耐震改修のための具体的な費用の見積もないのに、出馬予定者の大半は、「危険だ」「改修費が高い」「維持費がかかる」と断言して、「解体しかない」とおっしゃる。百三十年そこそこの歴史しかないこの都市にあって、六十年の歴史を刻んだ建物を、しかも建築学的な価値が認められた文化遺産とも言える建物を、そんなに簡単に廃棄物にしてしまって良いのだろうか。どうにかして遺せないものか。素朴にそう思う。

 読者からメールが届いた。「新庁舎の外観アンケート実施について、最近、ホームページをみて、びっくりしたり、腹が立ったのでメールします」とある。彼が「腹が立つ」と怒るのは、識者や公募市民ら十人からなる「外観デザイン会議」なる審議会が、いつの間にか作った新庁舎のコンセプトだ。いわく、「旭川の ときに 映える庁舎」。庁舎の外装の色について、四つの案を示し、市民に「どれが良いですか?」と答えさせるアンケートに、いきなり、初めて、登場した。

 そのコンセプトを補強する言葉として、「人々の営みの蓄積 歴史・文化」「この先100年を見据えた旭川らしさを見つけ出す視点」「『風土』×『環境』×『歴史・文化』」「市民と共に歩んでいくこれからの庁舎の姿を示すコンセプト」「時を刻む、季節を映す、旭川の人・環境とともにある場所」と、やたら「歴史」だの「文化」だの「とき」だのが強調されている。七十代、匿名希望氏は、次のように書く。

 ――このコンセプトにひどく腹が立っています。

 どこに、この新市庁舎の建物のどこに、歴史・文化、自然をベースにした旭川らしさがあるのでしょう。よくもぬけぬけとこんなコンセプトを出したものだと思います。

 現庁舎(旧赤レンガ庁舎)を壊し、周りを駐車場だらけにして、コンセプトにある歴史も文化も、さらに自然もあるわけがないでしょう。そもそも外観デザインは、これで決まりですか。

 また、昨年、四月二十二日の説明会では、(久米)設計会社の責任者は、会場からの質問に「旭川らしさは全く考えていません」と答えたデザインのままでしょう。文章だけを書き換えるのは、ダメでしょう。

 「旭川の ときに 映える庁舎」というコンセプトは、初めて見ました。説明文では、公募市民の皆様といった方々と議論を重ねて外観イメージをつくったと書かれていますが、とても信じられません。

 そもそも外観の色を決めるのに市民アンケートで決めるなんて無茶でしょう。ここは専門家が材質やデザイン、周りとの調和を考えて判断することでしょう。(引用終わり)

 この陳腐な、人をばかにしたような、「コンセプト」とも呼べない言葉の羅列を見せられて、正直、ガクッとなった。腹が立つというよりも、苦笑いして、頭をかくしかなかった。市民に対するアンケートにしても、二月十九日号の小欄で、「こんな無駄なことはやめた方がいい。意識が高い、知見を有する専門家に問うならば、意味もあろう。そうでない一般市民は尋ねられたって困惑する、迷惑なだけだ」と書いた。

(工藤 稔)

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