読者から、「買物公園からゴミ箱が消えたんだけど」と電話があった。「市民に知らせる手順を踏まずに、突然、ゴミ箱をなくすというのはちょっと乱暴じゃないかと思って」という話である。コンビニエンスストアの店舗前にあったゴミ箱が店舗の中に入れられたのは、家庭ゴミなどが捨てられるから、と聞いた。おそらく、買物公園のゴミ箱も同じような理由なのだろう。

 数日後の朝、たまたま通りかかった三・四仲通りの買物公園で、ベンチの周りにゴミが散乱しているのを見た。近くのコンビニで買った食べ物をベンチに座って食べたグループが、袋や包装紙をその場に捨てていったのだろう。少し前まで、ゴミ箱があった場所である。ゴミ箱がなくなったことに対する腹いせにも見えた。

 担当の市土木部土木管理課に話を聞くと、年度が替わった今月一日、一条から八条にあった八カ所のゴミ箱を撤去したという。公園なども含め、戸外のゴミ箱は全てない。買物公園が最後だったそうだ。家庭ゴミの収集有料化(〇七年)に合わせて、撤去が進んだという。担当職員は「ゴミ箱があった場所にゴミが捨てられることも一時的にはあると思うが、減っていくと見ています」と話した。「こうほう旭川市民・あさひばし」で、広報する予定もないという。時代の流れである。枕はここまで。

 四月二十一日の新聞各紙は、「聖地復活」(毎日)、「にぎわい再出発」(朝日)などと、「Jヴィレッジ」が八年ぶりに全面再開し、記念イベントが開かれたと伝えた。記事には、Jヴィレッジのグラウンドでサッカーをする子どもたちの写真があった。朝日の記事を引用すると。

 ――東京電力福島第一原発事故の収束や廃炉の作業拠点となったスポーツ施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)が20日、8年ぶりに全面再開した。最寄りのJR常磐線には新駅「Jヴィレッジ駅」が開業し、原発事故の影響やその風評が残る地域の復興拠点として再出発した。(中略)施設は来年3月26日から始まる東京五輪聖火リレーの出発地にも決まっている。(引用終わり)

 この記事だけ読むと、あたかも八年前の原発事故はすでに収束し、風評被害は多少あるけれど、福島の復興は着々と進んでいる。もう、大丈夫だー、という明るい雰囲気を感じる。私には、そのように読める。

 昨年五月、福島県いわき市出身の獣医師・武藤健一さん(69)に案内されて、被災地を訪ねた。三泊四日の忙しい旅ではあったが、現地で原発事故を体験し、今もその渦中にある方たちの話もうかがった。一年前の「フクシマ」の体験と、この記事の間に強い違和感を覚える。たった一年のうちに、放射線量は画期的に低減し、子どもたちが戸外で遊ぶことを危険視する空気は雲散霧消したのだろうか、と。

 昨年、訪れたとき、Jヴィレッジは東京五輪・パラリンピックで練習場として使用するための工事が行われていた。私たちは、そこから楢葉町の復興拠点にするために整備が進む「コンパクトタウン」に向かった。二〇一五年九月五日に、全町の避難指示が解除され、帰還したが住宅がない人などを対象に、百戸ほどの平屋の住宅が建てられていた。その新しい住宅地に隣接して商業施設「ここなら笑店街」が造成される工事が佳境だった。案内してくれた地元の方の話では、新築住宅は五年契約で、家賃は免除。八割ほどが入居しているが、ほとんどは高齢者だという。八千人だった町の人口は、全町避難を経て、その時点で二千三百人が居住しているが、原発の廃炉現場や除染作業にあたる作業員も含まれるということだった。

(工藤 稔)

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