前週の小欄で、「安倍一強」と評される理不尽で嘘八百の政治姿勢に呆れ果てる流れで、勢いにまかせて次のように書いた。

 ――断っておくが、消費税を予定通り上げろ、と主張しているのでは決してない。消費税を上げる、上げないを世論操作の道具に使うな、と言っているだけだ。(中略)このことについては、またの機会に。

 すると、すかさず読者でもある友人からメールが届いた。「次号を、またの機会にしなさい」との要求である。素直に従うことにする。

 大村大次郎さん。一九六〇年大阪府出身の元国税調査官。現在は評論家、税務コンサルタントとして活躍し、著書多数。大村さんのメルマガを時々拝読している。先日の、“目から鱗”の記事「大村大次郎の本音で役に立つ税金情報」の要旨を紹介しよう。

 ――「ヨーロッパの先進国に比べれば日本の消費税はまだ全然安い」。消費税推進派の人たちは、こう言う。というより、このことを最大の武器にしてきた。

 だが、ヨーロッパの先進国の消費税と、日本の消費税というのは、その中身がまったく違う。同じように間接税だが、両者はまるで違うものだ。

 消費税の最大の欠点は、「低所得者ほど負担が大きくなる」ということ。年収二百万円の人は、年収のほとんどを消費に使うから、年収に対する消費税の負担割合は限りなく八%に近くなる。

 一方、年収一億円の人は二割を消費に回すだけで十分に豊かな生活ができる。二千万円の消費に対する消費税は百六十万円。だから年収一億円に対する消費税の負担割合は、一・六%に過ぎない。

 つまり消費税は、年収二百万円の人からは年収の八%を徴収し、年収一億円の人からは年収の一・六%しか徴収しない。このように間接税というのは、低所得者ほど打撃が大きい。
 ――ヨーロッパの先進国は、間接税の税率は高いが、低所得者に対して様々な補助制度がある。
 イギリスでは生活保護を含めた低所得者の支援額はGDPの四%程度。フランス、ドイツも二%程度だ。だが日本では〇・四%程度。当然、低所得者の生活状況はまったく違ってくる。

 日本では、低所得者の所得援助というと「生活保護」くらいしかない。しかも、その生活保護のハードルが高く、本当に生活に困っている人でもなかなか受けられない。

 生活保護というと不正受給ばかりが取り沙汰されるが、本当は「生活保護の不受給」の方がはるかに大きな問題なのだ。イギリス、フランス、ドイツなどの先進国では、要保護世帯の七〇~八〇%が所得支援を受けているとされる。

 欧米の先進国では、片親の家庭が、現金給付、食費補助、住宅給付、健康保険給付、給食給付などを受けられる制度が普通にある。また失業者のいる家庭には、失業扶助制度というものがあり、失業保険が切れた人や、失業保険に加入していなかった人の生活費が補助される。

 貧困老人に対するケアも充実している。ドイツでは年金額が低い(もしくはもらえない)老人に対して、社会扶助という形でケアされることになっている。

 フランスでも、年金がもらえないような高齢者には、平均賃金の三割の所得を保障する制度があり、イギリスにも同様の制度がある。

 ――住宅支援も充実している。フランスでは全世帯の二三%が国から住宅の補助を受けている。その額は、一兆八千億円。またイギリスでも全世帯の一八%が住宅補助を受けている。その額、二兆六千億円。日本では、住宅支援は公営住宅くらいしかなく、その数も全世帯の四%に過ぎない。支出される国の費用は、わずか二千~三千億円程度。先進諸国の一~二割に過ぎない。

(工藤 稔)

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