旭川市が国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の「創造都市ネットワーク」のデザイン分野で、文部科学省の推薦を受けたと報じられた。このネットワークとは何ぞや。ものすごく簡単に言うと、地域固有の文化を守りながら、新しい産業の創出を目指して、文学、音楽、映画、アート、デザイン、メディアアート、食の七つの分野で特色ある都市を認定するもの。世界では七十二カ国百八十都市、国内では六分野で八都市が加盟している。十一月のユネスコの選考で認められれば、国内ではデザイン分野で名古屋と神戸に次ぎ三都市目となる。札幌はメディアアート部門で加盟認定(二〇一三年)を受けている。

 旭川が国内推薦都市に選ばれたのは、一九九〇年から三年に一度開催し続けて来た「国際家具デザインフェア旭川(IFDA)」を通じてヨーロッパやアジアなどと国際交流を活発に行い、人材育成にも取り組んでいる姿勢と業績が評価されたという。加盟都市に加われば、世界七十二カ国の百八十都市との交流の機会が生まれると期待される。そして、「どれほどデザインの感性にあふれた都市(まち)なのかしら?」と、すぐれた感覚の持ち主たちが視察や観光に来てくれるかも知れない。いや、きっとそうなる。なんて言っても、国連が数多ある世界中の都市の中から抜きん出て「創造的な、デザイン都市」と認めるまちなのだから。

 そこで提案である。一九五八年に建設された現在の市庁舎「赤レンガ庁舎」を耐震改修し、内部を斬新にリニューアルして残すことを。現在基本設計の策定が進められている新庁舎とつながるよう改修を施し、西川将人市長が最近はとんと口にしなくなった「シビックセンター」として活用することを。

 小欄で幾度も書いているから〝耳にタコ〟だとひんしゅくを買うかもしれないし、いつまで固執するのかとお叱りを受けそうだが、どうしても諦めきれないのだ。六十年前、この赤レンガ庁舎は、まちの歴史を引き継ぐ形で設計、建設された。現在は旭川電気軌道の整備工場となっている旧第七師団騎兵連隊の覆馬場(おおいばば・春光三ノ七)、市民活動交流センターとして使われている旧国鉄旭川工場(宮前一ノ三)、合同酒精旭川工場の蒸留塔(南四ノ二十)、そして大雪地ビール館などが入る上川倉庫群(宮下通十一)…。設計者の佐藤武夫(一八九九―一九七二)は、旧制上川中学(現東高)に通った。佐藤は後に次のように書く。

 ――わたくしは旭川で足かけ三年を過ごした。当時中学校の一年生で、酷(きび)しい寒さの中を一里ばかり距(へだた)った上川中学へ通ったわけである。十月の末から翌年の四月ごろまでは、雪の中を歩くのが辛かった。半年近く灰色の空と一面の雪におおわれた世界の中で、小さな煉瓦造の建築などを見て通ることは、視覚の中で落とし物を見つけたように嬉しかった。旭川の市庁舎を設計するに当って、わたくしはこの実感を最初に思いおこした。煉瓦を壁に使おうと心に決めたのである。それもコンクリートと煉瓦を交錯して鮮やかなチェックの模様を、あの灰色の半年の空に聳立(しょうりつ)させようと考えたのである。(後略・引用終わり)

(工藤 稔)

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