旭川に本社がある会社が支社・支店を置く帯広や釧路、根室、函館など道東、道南地方を台風が直撃し、観測史上例のない強風で送電線が倒れるなどして、数十万戸が停電している。電話も通じず、猛暑にもかかわらずエアコンが使えない。断水、交通障害、建物の倒壊などの被害も相当数報告されている。

 支社や支店がそのような危機的な状態で、社員や家族は地域の住民とともに命の危険にさらされている。その時、本社では役員交代の儀式がいつものように平然と行われ、社長以下がモーニング姿で記念写真に収まっている。前列中央に史上最長の在任期間を誇る現社長、その隣には数々の舌禍事件で知られる元社長が笑みを漏らし、二人の女性役員は、きらびやかなイブニングトレス(よく分からないけど、多分)に身を包み、晴れやかな笑顔がこぼれる。

 台風十五号による大規模停電が起きた千葉県では、十一日午後七時の時点で、四十万軒近くが停電していた。読売新聞十二日付朝刊によると、第四次安倍改造内閣の面々が記念写真を撮影した時間が十一日午後七時二十三分とある。昨年七月の西日本豪雨の真っ最中、安倍首相を囲んで赤い顔を並べる自民党国会議員たちの「赤坂自民亭」を思い出した。

 この首相の「国民の生命、財産を全力で守る」なんて言葉は、単なる口癖なのだ。そう考えると腹も立たないのだけれど、共同通信の世論調査によれば、この内閣改造で、内閣支持率が八月の前回調査から五・一ポイント上がり、五五・四%になったと聞くと、愕然とするしかない。不支持は二五・七%。八・九ポイントの減だそうな。家人は、「国の愚民化教育の成果が、この首相になって一気に出て来たんでしょうよ」と冷静に言う。

 常磐公園の永山武四郎の銅像の周りで、いい歳をしたオジサンとオバサンと、その娘だろう成人女性が、スマホ片手にゲームをしているらしき光景を眺めると、家人の指摘は当たっているかも知れぬと思うが、正直なところ分からない。世の中の動きが何が何だか分からなくなる。頭の芯がジーンと鳴る感じ。枕は、ここまで。

 前号と前々号で、現市庁舎の「赤レンガのDNA」について書いた。友人でもある読者の女性から、三浦綾子の小説『氷点』を映画化した山本薩夫監督の作品のエンディングに、竣工から八年後の現赤レンガ市庁舎が使われているというメールが届き、「私もまだあきらめきれない一人です」と言う彼女との“ヤギさん郵便”みたいなメールのやり取りを紹介したのだった。

 たまたま、仕事の関係で無理なお願いをすることも多い印刷会社を訪ねた際、小紙の読者でもある社長と映画『氷点』の話になった。当然、話の流れは赤レンガ庁舎になる。彼が、「今は、いろいろな物が置かれたり、改造されたりしてゴチャゴチャだけど、完成した直後の内部の写真を見ると、すごく美しいよね」と言う。聞けば、前号と前々号の話の発端、旭川デンマーク協会の会長、大矢二郎・東海大学名誉教授が代表を務める「赤レンガ庁舎を活かしたシビックセンターを考える会」が二〇一六年十二月に、『昭和を生きた建物 旭川市役所』のタイトルで、九枚組のポストカードをつくっていて、そこに竣工直後の写真が使われているという。

(工藤 稔)

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