九月二十七日付朝日は、一面トップ、二面「時時刻刻」、十四面「社説」、二十六面「問題点を整理」、そして三十三面に作家らの「声」と、大々的に取り上げた。社をあげて「どういうことなのだ」と声を上げる姿勢がにじむ。

 日本一の部数を誇る読売は、同日付“第三社会面”の下の方に、「愛知芸術祭に補助金不交付」の二段見出しの記事。いかにも地味。目立たないようにという配慮を感じさせる。

 芸術祭の総事業費は約十二億円。県が少なくても六億円、名古屋市が二億円を負担し、国が文化庁の補助金として七千八百万円を交付する予定だった。企画展「不自由展・その後」の費用は四百二十万円だったとされる。

 社会面のトップで扱った毎日の記事を引用しよう。

 ――愛知県で開催中の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で、企画展「表現の不自由展・その後」が抗議や脅迫で中止に追い込まれた問題で、文化庁は26日、「県は円滑な運営を脅かす重大な事実を認識していたが、申告しなかった」として、補助金適正化法に基づき、芸術祭への補助金を交付しないと発表した。手続きの不備による不交付は異例という。芸術祭実行委員会会長の大村秀章・愛知県知事は26日、文部科学省を相手取り、補助金の不交付決定の取り消しを求めて提訴する方針を示した。(引用終わり)

 以下は、前日の二十六日付道新の社会面に載った記事。見出しは「不自由展『再開すべき』 検証委、中間報告で提言」。

 ――国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が中止になった問題を巡り、愛知県が設置した検証委員会は25日、会議を県庁で開き、「条件が整い次第、速やかに再開すべきだ」と提言する中間報告をまとめた。トリエンナーレ実行委員会会長の大村秀章知事は記者会見を開き「再開を目指したい。芸術祭の会期(10月14日まで)は迫っており、作業を急がないといけない」と述べた。(引用終わり)

 八月十二日号の小欄で、大村知事の発言を紹介している。以下、その一部。

 ――いちばんひどいのはね、国の補助金もらうんだから国の方針に従うのは当たり前だろう、というようなことを平気で書かれているところがありますけど、みなさん、どう思われます? 本当にそう思います? 私、まったく真逆ではないかと思いますよ。税金でやるからこそ、むしろ憲法二十一条は、きっちりと守らなくてはいけないのではないでしょうか。この数日間、「ちょっと待てよ」とつらつら考えて、非常に違和感覚えております。(引用終わり)

 大村知事が検証委(座長、山梨俊夫・国立国際美術館館長)の中間報告を受けて、表現の不自由展・その後の「再開を目指したい」と表明した翌日、文化庁による「補助金不交付」の発表である。文化庁を所管するのは文科省。大臣は加計学園問題の中心人物の一人、萩生田光一氏である。安倍晋三首相の側近中の側近。萩生田大臣は、「正しく申告してくれないと、文化庁としては判断できない」(朝日)、「文化庁は展示の内容についてまったく関与していない。検閲にあたらない」(毎日・読売)と述べていると報じられる。

 以下は、八月十二日号の小欄。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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