五日付毎日新聞を引用しよう。前日召集された臨時国会での安倍晋三首相の所信表明についての記事である。

 ――「日本がどのような国を目指すのか。その理想を議論すべき場こそ、憲法審査会ではないか」。首相が演説の最後で憲法改正に触れると、衆参両院の本会議場は野党からのヤジで騒然となった。

 国民投票法改正案を審議する衆参の憲法審査会は、与野党対立で議論の停滞が続く。大型商業施設などに共通投票所を設けるなど公職選挙法の改正に合わせるのが主な内容だが、立憲民主党などは首相が主導する憲法議論そのものに警戒感を示す。

 7月の参院選で首相は「憲法審で1年間に衆院は2時間、参院は3分しか議論していない」と野党を批判。改憲発議に必要な改憲勢力3分の2を割ったものの、自公過半数の目標を達成し、選挙後に「審判は下った」と野党に迫った。

 9条改正に慎重な公明党は「首相が国政選挙で憲法を初めて争点にし、選挙結果で信任を得たと言っている」と、首相が改憲に踏み込むのではと警戒する。残り任期から逆算し、今国会がタイムリミットとして首相が勝負に出るのではとの懸念は根強い。(引用終わり)

 五日朝起きると、家人が「北海道の議会が、憲法改正に賛成する決議をしたんだって? 北海道の議会って、どうなっているの?」と不機嫌な表情で言う。前日夜のテレビのニュースで知ったそうだ。かなり正確さを欠く情報だが、彼女はそのように受け止めたのだろう。四日付道新が、「憲法意見書案可決へ 道議会初 公明賛成、きょう採決」の見出しで記事を書いている。以下。

 ――道議会自民党・道民会議が定例道議会に提出する、憲法改正に向けた国会議論を促す意見書案について、公明党は3日、賛成する方針を固めた。公明党はこれまで意見書案提出に慎重だったが、自民会派と協議し、改憲議論に関する表現を弱めることで賛成に転じた。(中略)

 自民会派は当初の原案で「国民的議論を喚起し、国会において活発かつ広範な議論を推進するよう強く求める」としていたが、公明の要望に応じ、「国民の広範な理解が得られるよう、国会の憲法審査会で丁寧な議論を進めるよう求める」と修正。題名も「憲法論議の推進を求める意見書」から「憲法論議の意見書」に表現を弱めた。

 公明会派の志賀谷隆幹事長は北海道新聞の取材に「意見書案は憲法審査会で丁寧な議論を求めるもので、(党本部の)山口那津男代表の考えを越えるものではない」と述べた。(引用終わり)

 さて、「政権のブレーキ役」を標榜する一方で、「どこまでもついて行きます下駄の雪」と揶揄される公明党は、憲法改悪に前のめりの安倍首相にどう対峙するのか。参院選が終わった後の八月六日、山口代表は広島市での記者会見で、自民党内に「参院選勝利で民意を得た」との見方が出ていることについて、「何の民意を得られたのかさっぱりわからない」と疑問を呈したと報じられた。

(工藤 稔)

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