十一月十二日号の小欄で、旭川市が国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の「創造都市ネットワーク」のデザイン分野で認定を受けたのに、西川将人市長は記者会見も開かず、認定決定の夕刻、市長のコメントが添付された「報道依頼」のメールが届いただけ。「西川市長は、内心は嬉しくないのかも知れない、もしかすると迷惑なのかも知れない、と疑いたくなる」と書いた。

 国連が数多ある世界中の都市の中から抜きん出て「創造的な、デザイン都市」と認めたまちが、およそ「デザイン」という語感とは無縁の、単なるオフィスビルの新庁舎を百五十億円も投じて建設する一方で、完成時に、わが国で最も権威がある建築賞を受賞し、最近では北海道で唯一、公共建築として「ドコモモ・ジャパン一〇〇選」に選ばれた、六十年を超える歴史を有する名建築を解体しようとしている、そのことが世界に知られてしまう、おお恥ずかしい…。で、

「市長にとっては迷惑かも」と推察した次第。

 私は次のように書いた。

 ――(前略)神戸市、名古屋市に続く国内三都市目のユネスコ認定である。西川市長が全国紙や通信社、テレビの記者やカメラマンを集めて会見を開き、全国に向けて堂々と「デザイン都市・旭川」をアピールする絶好の機会ではなかったのか。(中略)大げさではなく、旭山動物園につづく新たな“旭川ブランド”を手に入れた、そのお披露目のチャンスを自ら捨てたと断じていい。(引用終わり)

 私の主張を市長が受け入れてくれたのかどうか。十一月二十五日に開かれた記者会見の冒頭で、西川市長はユネスコ創造都市ネットワークへの加盟認定について、「非常に光栄なことで、この上なく嬉しい限りです」と述べた。

 この会見での説明やデザイン業界の方の証言から、今回の「認定」は予想外だったと分かった。関係者は「次回に向けての試運転のような気持ちで申請を出した。まさか認定されるとは」と語った。思わぬ「加盟認定」決定に、少々あわてたというのが実態のようだ。

 この会見で、小紙の記者が次のような質問をした。

 ――あさひかわ新聞の編集長が記事で触れたので、それに関連してうかがいます。市の総合庁舎が日本建築学会賞を取ったということは、デザインと無関係ではないと思います。今回の加盟によって、現在、取り壊す予定の現庁舎について何かお考えですか。

 西川市長の答えは。

 ――今回ユネスコ創造都市ネットワークに加盟することができたということは、今後、デザインを一つの大きな柱としていろいろなまちづくりを進めていく上で、大きなテーマになっていくと考えています。日本建築学会賞の受賞や、ドコモモ一〇〇選への選出など、現庁舎の価値は、十分認知されているととらえています。御承知のように、現庁舎の取扱いについては、市民の皆さんからの意見や議会の意見や議論を踏まえて、慎重に検討を進めてきた結果、維持や耐震工事等に掛かる経費なども含めて総合的に判断をし、解体撤去し、敷地の有効活用を図るという、行政としての一定の結論を出してきているものであります。そういう意味では、今回の加盟認定が、現庁舎の取扱いに影響するものではないととらえています。これも以前からお話ししているとおり、現庁舎の歴史的な価値を、しっかりと次世代に引き継いでいくように、その手法等を引き続き検討していかなければいけないと考えています。

 記者は、食い下がる。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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