旭川大学の公立化が、ようやく、少し現実味を帯びてきた。今年度から市総合政策部の中に新設された「大学公立化」の担当部署が、「旭川大学をベースとした公立大学の設置にかかわる課題整理の結果について」と題する資料を議会に報告した。公立化に向けて、旭大と協議を続けてきた課題整理をまとめたものだ。

 A4判二十七㌻の報告書の急所が何点かある。議会や市民の理解を得られるかどうかの、いわば“キモ”である。

 その一は、議会でも「金食い虫になるのでは」と危惧する声が少なからずある「運営収支」のシミュレーション。運営開始から、公立大学に義務付けられる中期目標六年間の二期分、十二年間の収支を試算している。

 想定では、二〇二二年四月に公立大学は開学する。その二年後、二〇二四年四月から新学部「地域創造デザイン学部」(ものづくりデザイン学科・三十人、地域社会デザイン学科・五十人)を設置する。

 試算は、新学部が設置される三年目(二〇二四年)と四年目の二年間は、合わせて約六千万円の赤字を計上するが、それ以外は年一億二千六百万円から三千百万円の黒字を見込む。

 二つ目は、これも公立化をめぐり議論を呼んだ大学を現法人から分離した後の高校などの運営についてだ。

 今回初めて、財産分与についての具体的な数字が示された。学校法人旭川大学の金融資産の総額は二十七億一千万円で、公立化に伴い教職員の退職金を清算するために要する経費は四億三千万円。また、大学・短大の建物の耐震化や修繕工事に三億四千万円。差し引くと十九億四千万円となる。そのうち公立化する大学・短大に約三億円、私立のままの高校・幼稚園・専門学校に約十六億四千万円が継承される。
 コメントとして「公立化に伴い生じる当面の費用としては、大学・短大の施設や土地等の資産評価や財務・人事システムの整備に伴う費用が発生するが、継承される資産の約三億円で対応する。そのほか、新設する地域創造デザイン学部のための施設・設備等にかかわる費用については、現時点においてはトーマツ(市が委託した民間調査会社)が試算した約七・二億円程度と想定しており、この部分については、市の財政負担が生じる」とある。

 公立化に向けた教職員の体制づくりについては、新理事長・新学長のもとで、その採用の要否が決まる。教員は、学位や論文、これまでの業績評価のほか、面接や小論文で、職員は面接によって要否が判断される。

 そして学費である。私立旭川大学の授業料は、経済学部が八十万円、保健福祉学部・保健看護学科が百二十万円。公立になると国から地方交付税が交付されるため、経済学部も、保健福祉学部も、新設される地域創造デザイン学部も、すべて五十三万五千八百円と大幅に安くなる。現在は年額七十五万円の短期大学の授業料は、三十九万円になる。

(工藤 稔)

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