「あの三十万円給付って、どんな人がもらえるんだ? 国民年金で暮らせない人や生活保護の人たちか?」、七十歳代の経営者が質問する。「いえいえ、年金生活者や生活保護の人たちは、コロナで収入が減ったんじゃなくて、元々苦しいんです。彼らは、もらえません」。

 安倍首相が「世界各国と比べて遜色ないどころか、最大限の規模」と例によって大言壮語する緊急経済対策の目玉の一つ、六兆円規模の現金給付は、以下の条件を満たす人が、申請すると、早ければ五月末までに本人名義の口座に振り込まれるのだそうだ。その条件とは――

 二月から六月の間のいずれかの月に、①世帯主の収入が、感染が発生する前と比べて減少し、年間ベースに換算して、住民税が非課税となる水準まで落ち込んだ世帯。

 ②世帯主の収入が五〇%以上減少し、年間ベースに換算して、住民税が非課税となる水準の二倍以下となる世帯。

 理解できます? この新型コロナ感染症による社会全体への影響は、いま生きている私たちが経験した戦争や経済危機とは全く次元が異なると思う。市内金融機関の幹部は「これまで取引がなかった会社や事業主から、ものすごい量の相談が押し寄せている。間もなく、いま私たちがやっている対症療法ではどうにもならない局面になるだろう。すでに、末端の最前線にいる私たちの判断では、どうにもならない事態になりつつある」と危機感を吐露する。そうなのだ、地方の金融機関がどうにかできるレベルの危機ではないのだ。

 前号で書いた、布製の“アベノマスク”を一戸に二枚ずつ配付するのに、四百六十六億円を投じるそうだ。明日のメシを心配する国民にどれほどの恵みになるのだろう。そんなアホなことに金を使うなら、全国民に三十万円を支給すればいい。ざっと三十六兆円。議員と公務員を除き、年金生活者や生活保護の人たちにも給付する。麻生大臣のような、もらう必要がない富裕層からは、後から税金で返してもらう。国民が取りあえず明日のメシや寝る場を心配しなくて良い情況をつくりながら、個別の経済や福祉の対策を打ち出してくれ。

 次元が違うからと、地方自治体は国の出方をボーッと眺めていればいい、という話ではない。今号にあるように三月のうちに面談を申し込んでいた旭川ホテル旅館協同組合と旭川シティホテル懇話会が七日、ようやく西川市長に緊急要望書を手渡すことができた。固定資産税や上下水道料金の減免など、決断すれば自治体として早急に取り組めることばかり、六項目の要望だ。

 両団体の切羽詰まった、切実な訴えに、わが“大統領”の答えは、「国や道の経済対策を見極め、不足する部分について市としてできる対策を考え、最大限取り組んでいきたい」だと。トホホ…。

(工藤 稔)

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