「マスク」の話。前号で、百円ショップで手に入る材料で作る「山頭火おやじの かんたんマスク」を絵入りで紹介したところ、二人の方から、「作ってみました。すごいアイデアですね」、「ゴム、使い捨てマスクのを使ったら、耳が痛くなくなりました」などと、わざわざ連絡をいただいた。

 世界にラーメン店を展開する、らーめん山頭火のオーナー・畠中仁さん(68)は、「店を訪ねて来たら、丁寧にお教えしますよ」と言っていたのだが、緊急事態宣言で、飲食店はどこも、まさに緊急事態。畠中さんの“研究所的店舗”、あさめし前田本舗(三ノ八緑橋ビル)も、山頭火本店(一ノ八)も休業に追い込まれた。「今のところ六日まで閉店しています。再開したら、いつでもどうぞ」と畠中さんは話しています。

 さて、「アベノマスク」の話。芸能界の話題に弱い。それでも、キョンキョンこと小泉今日子あたりまでは、何とかついていける。ネットの世界で、その小泉今日子がアベノマスクを批判していると話題になっているそうだ。

 彼女は社長を務める「株式会社明後日」名義のアカウントでツイッターをしていて、結構、つぶやいている。二十二日午後一時、「アベノマスクの不良品を政府、公表せず」というニュースをリツイートして、次のようにつぶやく。

 ――人間だから間違えや失敗は誰にでもあるだろう。一生懸命やった結果だったら人はいつか許してくれるかもしれない。でも汚らしい嘘(うそ)や狡(ずる)は絶対に許されない。カビだらけのマスクはその汚らしさを具現化したように見えて仕方がない。

 安倍首相の肝いりで、全国五千万世帯に二枚ずつ配付する布マスクに、カビや汚れ、虫や毛の混入が見つかっている。政府は、その事実を発表していなかった。キョンキョンは、この政権の本質がウソやズルだと見抜いている。森友、加計、桜を見る会へと続く数々のグロテスクなスキャンダルと、アベノマスクの不良品の根源は同じだと知っている。

 そして、「布マスク」の話。安倍首相は十七日夕、記者会見を開いた。前日、緊急事態宣言を全国に拡大すると発表している。なぜか翌日になった会見は約二十分の“独演会”のあと、記者の質問に答える、いつものスタイル。

 朝日新聞の記者が質問した。

 ――(前略)最近では布マスクや星野源さんの動画でも批判を浴びているのですが、この間の一連の新型コロナの対応について、御自身でどのように評価されていますでしょうか。

 安倍首相が、答える。

 ――(前略)先ほど申し上げましたように、まずはサージカルマスク等を医療機関にしっかりと配付しながら、言わばサージカルマスクの受注について、この対応をしていく上においても、それ以外の、例えば介護施設等々については布マスクを配付させていただきました。今、御質問いただいた御社のネットでも、布マスク、三千三百円で販売しておられたということを承知しておりますが、つまりそのような、この需要も十分にある中において、我々もこの二枚の配付をさせていただいたと、こういうことでございます。

 首相は、朝日新聞に皮肉を言ったつもりだった。ネットで買い物をしない私は関知しないのだが、朝日新聞社が運営する「朝日新聞ショップ」なる通販サイトがあるんだと。そこで布マスクを販売しているという話を、ネトウヨが「朝日新聞が2枚で3300円のぼったくりマスクを販売中」などと騒ぎ立てたのだそうな。一国の首相が、ネトウヨ情報に頼って、全国放送されている会見で、低俗な皮肉を口にする。しかも、エセ情報だ。あ然と言うほかない。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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