自宅の狭い土地を耕し始めて、ちょうど二十年になる。春先に堆肥をたっぷりすき込み、苗を植え、種を蒔き、雑草を取ったり、自家製の肥料を与えたり、秋まで丹精する楽しみは何物にも代えがたい。今朝も4日前に定植した長ネギの苗に水をやりながら、さて、あと何年こうして野菜を作れるか、との思いが脳裏をかすめた。来年には七十歳になる。仕事はそろそろ“定年”にしなくては。趣味の畑もいいところ五年か、六年か。振り返ってみれば、あっという間の七十年である。

 定年延長が世間を騒がせている。時の首相が、自らの保身のために、絶大な権限を持つ検察官の人事を左右できるよう法律を変えようとする、本人は否定するが、状況証拠はそれを強く示唆する、そんな構図である。安倍晋三という政治家が政権の座に就いてからの、森友やら、加計やら、桜を見る会やらの我田引水、お仲間優遇、政権私物化を見せつけられていると、そう考えるのが自然だ。

 この政権は、例によって検察庁法改悪も数を頼んで強行突破しようとした。その寸前のタイミングで、当の定年を延長された黒川弘務東京高検検事長が新聞記者と賭けマージャンをしていた事実が露見した。黒川検事長には軽微な処分が下されて、辞職するはめに。政権が口頭決済による法解釈の変更などせずに、規定通りに黙って二月に定年退職させていれば、元高検検事長という輝かしいキャリアを看板に、売れっ子弁護士として日の当たる道を堂々と歩けたであろうに。安倍首相に人生を狂わされた、可哀そうな人がまた一人。

 コロナに隠れてしまった感があるが、週刊文春三月二十六日号が報じた、「森友学園疑惑」の文書改ざんを強要されて心を病み自死した、財務省職員・赤木俊夫さん(享年54)の手記の中で、「すべて佐川局長の指示です」と名指しされた佐川宣寿・元国税庁長官も、安倍首相に人生を狂わされた官僚の一人であろう。

 文春の記事の筆者は、元NHK記者で、現在は大阪日日新聞に籍を置く相澤冬樹・記者。赤木さんの妻が佐川氏と国を相手に一億一千万円の損害賠償を求めて提訴するという記事の中に、相澤記者が佐川氏の自宅を訪れてインターホンを押す場面がある。以下、少し長いが引用しよう。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。