大手紙も、テレビのキー局も、安倍晋三自民党総裁・内閣総理大臣の後継者選びをワイワイはやし立てている。よくやるよ、とうんざりする。安倍首相が、用意周到に突然の辞任会見を行う遙か前から、ちょっとニュースを読み聞きしている者ならば、「次は、菅で決まりだな」などとささやき合っていたものだ。

 そう、出来レースなのだよ。八百長らしくない体裁にするために、幾らかの腐心はした形跡は認められるが、あったことをなかったがごとく言いくるめる、鷺(さぎ)が、いつの間にか烏(からす)になっちゃってるのに慣れさせられた国民は、八百長だと知っているのに知らないフリをする、いわゆる空気を読める、小賢しい習性を身につけた。歴代一位になった、この首相の連続在職日数が、そうさせた。

 党員投票をしたら、安倍後継内閣ではなくなってしまう可能性もある。「森友の再調査」を匂わせるアイツ政権になるなど、とんでもない。ここは「コロナ」を理由に手続きをはしょって、首相の女房役として「森友」や「加計」や「桜を見る会」「検察庁法改悪」などなど数々の疑惑を隠蔽し、改ざんし、廃棄して、ギリギリ乗りきって来た官房長官を総理総裁にしなければ全ては水泡に帰すではないか、となった。滑稽極まる茶番は、見え見えだっちゅうの。

 それにしても、辞任会見をした直後に世論調査を行ったら、安倍内閣の支持率が急上昇したというニュースには驚いた。共同通信が八月二十九、三十日に実施した調査では、内閣支持率が五六・九%。一週間前の二十二、二十三日の調査と比べると二〇・九ポイントも増えた。逆に不支持率は一四・二ポイント下がって、三四・九%だったそうな。一日付読売新聞は、「ドキュメント ポスト安倍」の記事で、内閣支持率が約二〇%も上昇して五割を回復したという報道に、首相は周辺に「びっくりした。こんなことがあるんだね」と漏らしたと報じた。そして、「31日、官邸を後にする首相の足取りは軽かった」と書いた。なんだ、元気じゃないか。

 そんなグチをちょっとメル友に送ったら、返信が来た。以下。

 ――支持率「上昇」は、やはり、垂れ流しで「病気辞任モード」を作り出した官邸周辺と御用マスメディアの為せることだと思います。大成功ですよね。

 「志半ばに病で辞めるとは気の毒」という、この国のなんとも表現できない「価値観」にうまく乗ったということでしょう。だからこそ、後継の(誰がなるにせよ)安倍“的”首相は、「これまでの安倍政権の政策を全面的に継承する」と、きっぱりと言い切れるのだと思います。八年弱にもわたる絵に描いたような数々の「悪政・失政」で辞めたとなると、誰も正面切ってそれを「継承する」とは言えませんものね。

 それにしても、またぞろ派閥の数合わせによる総裁選出騒動、それを面白おかしくワイドショー化してはやし立てるマスメディア。「誰がなっても同じ」という構図を作り、若者の政治離れを促進して、自民党と公明党(=創価学会)の堅い支持基盤のみで議席をかすめ取る戦略の繰り返しですなあ。たしかに、今の状況では、誰がなっても同じな安倍“的”首相でしかないでしょうからね。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。