「定員満たしても赤字試算」の大見出し。その上に小さく「私立旭川大の市立化 20年目、30年目」とある。北海道新聞十月二十八日付朝刊の旭川地域面に載った記事を眺めて、ため息が出た。「潰したいのかよー」と。

 小紙今号の一面から二面にかけての記事にある通り、議会の求めに応じて、西川市長が二十七日に開かれた市議会・総務常任委員会で詳細な説明をした。今年度予算に計上された百三十万円に付帯決議が付けられ、執行する条件として六項目の課題について、議会の理解が得られるよう市長が説明しなければならない。その中の一つが、公立化した場合の二十年後、三十年後の大学法人の収支予測を示せ、というものだ。

 目まいがします。三十年後の二〇五〇年、紙に印刷して宅配する「新聞」が、そのままの形であるか。あさひかわ新聞は、生き残っているか。三十年前の一九九〇年、新聞記者たちは原稿用紙に原稿を書いていた。ちょうどワープロに替わり始めた時期だったか。携帯電話など影もなく、ポケットベルが有り難かった時代だ。小学生がスマートフォンと呼ばれる「携帯パソコン」を所有するなど、誰が想像できただろう。次の三十年後には、もしかすると、自動車が空を飛んでいるかもしれないぜ。

 この試算をつくった市の担当職員に敬意を表する。やろうと思えば、どんな楽観的な収支予測でもでっち上げられる。“鉛筆をなめる”のは簡単なことだ。にもかかわらず、「情報操作していると言われたくない」と、ぎりぎりの客観性を保つために、国からの交付税の予測を含めてあえて厳しく試算した。その結果が、開学から二十年後、三十年後には、赤字になる可能性も否定できない、と正直に公表した数字なのだ。

 道新のこの記事について、必ずしも旭川大学の公立化に賛成ではない立場の市議会議員も、「この見出しを見たら、道新は旭大の公立化を潰したいんだなって、誰でも思うよ。そうじゃないとしたら、面白ければいい、という感覚かな。地域のオピニオンリーダーという存在のはずが、どうなっているのかね」と首をかしげた。

 「公立化は、旭川大学の救済ではないか」と反対する人がいる。市議の中にも、そうした論がある。私は小欄で、「救済して悪いのか?」と主張してきた。このまま私学として経営を続ければ、早晩、遅くても十年以内に、早ければ五年後には、厳しい状況に追い込まれるだろう。法人の金融資産は一八年度から一九年度の一年で、一億三千万円減っている。旭大に限らず、地方の私立大学は程度の差こそあれ、よほど独自のカリキュラムで学生を集めている法人以外は、いずれも厳しい状況にある。公立化することで、地域の大学を存続させる。それのどこが悪い? 何が非難されなければならない?

(工藤 稔)

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