「本当に、世の中、どうなっちゃうんでしょうね」。三・六街の居酒屋の主人は、困惑したような、あきらめたような、何とも言えない表情で言う。心なしか笑っているようにも見える。泣けないから笑うしかないという心境なのかもしれない。

 今月三日、豊岡の焼肉店で食事した某会社の同僚グループが、「市内で初のクラスター発生」と報じられた直後から、予約キャンセルの電話が次々にかかってきたという。いつもの年なら忘年会の予約で埋まっているはずの十二月の週末も、がらがら。「学生アルバイトも、申し訳ないけど休んでもらっている。あの子たちも大変だろうけど…」

 仕事上、様々な業種の会社を訪ねる。すると意外な業種の経営者が「大きな声では言えないけど、悪くないんだ。というか、去年よりいいんだ」と声をひそめるように話してくれる。“巣籠り”需要の恩恵である。皮膚感覚として、「変わらない」が建築関連などを中心に二割。例年より「良い」が二割弱。「大いに悪い」が三割強。残りが「一五から二〇%落ちかな」である。

 こんな話をしてくれるオーナーシェフもいる。「Go Toトラベルもね、観光客が中心の店は続けてほしいのだろうけど、うちのような地元のお客さんを相手にしている店は、正直、やめてほしい。少なくても、感染がこんなに拡大している今は、よそから人が入って来るのはまずいと思う」。この店もパート従業員に休んでもらい、家族だけで何とかこの危機を乗り越えようと必死だ。

 「どうなっちゃうんだろう」と私も思う。二〇二〇年一月、コロナ禍に見舞われる以前とは、暮らしも、仕事も、人間関係も、大きく変わった。まだ頭の片隅で、“元に戻るだろう幻想”がチカチカ点滅している。でも、おそらく来年も、再来年も、みんなマスクをしている風景は続いている。会議や集会は一カ所に集まらず、インターネットを通じてリモートで行うのが一般的になる。団体旅行の規模も小さくなり、個人・家族単位の旅行が主流になるだろう。外食も、お店で食べずに、持ち帰りが多くなるかもしれない。

 インターネットを使って買い物をする人が増えている。私の周りにもたくさんいる。「アマゾン使ったら、中古の本なんか百円とかで買える。翌日か、遅くても三日後には届く。本屋に注文したら、一週間もかかって、取りに行かなくちゃならない。一度アマゾンを使ったら、やめられないよ」。ちょっと考えたら分かるはずだ。本屋の商売が立ちいかなくなる。地元で金が循環しなくなる。地方の経済が縮小の一途をたどる。そんなヤツとは付き合いたくない。

 新型コロナが、ネットの商売を繁盛させている。この潮流は止められないだろう。だが、地方のまちの経済や文化を守るための方策があっていい。故郷ではない町に、返礼品につられて「寄付金」という名で税金を納めるという歪(いびつ)な地方創生ではなく、真の意味で故郷を応援する、正しい「ふるさと納税」のシステムがあるべきだ。コロナ禍の時代、ネットの商売に対抗できる、新たな実店舗という発想はないものか。そんなことを夢想しながら、今年もあと一カ月余りになってしまった。枕はここまで。

(工藤 稔)

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