――安倍晋三前首相(66)側が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、安倍氏らに対して政治資金規正法違反容疑などでの告発状が出されていた問題で、東京地検特捜部が安倍氏の公設第一秘書らから任意で事情聴取をしていたことが、関係者の話でわかった。(後略)
十一月二十三日付読売新聞のスクープである。その日の午後七時のNHKニュースは、「会場のホテル側が作成した領収書には去年までの五年間にかかった懇親会の費用のうち安倍前総理大臣側が少なくとも八百万円以上を負担したことを示す内容が記されていることが、複数の関係者への取材で新たに分かりました」と後追いした。
読売とNHKといえば、安倍・菅両政権に近いと目されるメディアだ。近いどころか、“どっぷり”が正確か。「関係者」は、東京地検特捜部に違いない。その二社に、地検がリークしたということは、落とし所が決まっている、政治資金収支報告書を訂正することで幕引き、そんな見方もある。一方で、「三度目の首相の座」を狙う動きを活発化する安倍氏の野望を菅首相が潰しにかかった、と解説する向きもある。
いずれにしても、この一連の報道で露わになったのは、一国の首相たる人物のすさまじい「ウソ」の連発である。あまりに見え見えのウソを堂々とつかれると、しかも国会という場で、聞いている側は「こんなウソをつけるはずがないから、もしかしたら本当なのかも」と毒気を抜かれた状態に陥るのかもしれない。
その“あり得ないウソ”の一端を振り返ってみよう。東京の高級ホテルで、一人五千円の会費で立食パーティーが開催できるのか、という疑惑に対する安倍氏の答弁である。毎日、朝日、道新の記事から引用する。
――夕食会(前夜祭)の費用は会場入り口の受付で、安倍事務所の職員が一人五千円を集金し、その場でホテル側に渡した(二〇一九年十一月二十日・参院本会議)
――安倍後援会の収入、支出は一切ないことから、収支報告書への記載は必要ないと認識している(同)
――明細書の発行はなく、ホテルからは営業の秘密に関わり資料提供に応じかねるとの報告を受けた(一九年十二月二日・参院本会議)
――一般的に領収書は宛名を「上様」として発行する場合があり、夕食会(前夜祭)でも上様としていた可能性はあるとのことだ(二〇年二月十七日・衆院予算委員会)
――私がウソをついているというのであれば、それを説明するのはそちら側ではないのか(同)
(注) この「説明」は、おそらく「証明」の言い間違いだと思われる
質問した立憲民主党・辻本清美氏が「買収ではないか」と追及すると
――極めて失礼な話だ。全くあたらない
私もウソをつく。語らないこともウソの一つだろう。バレたらどうしよう、と怖くなる。そんな小心者の私には、安倍前首相の数々の大ウソが理解できない。
(工藤 稔)
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