あと九日で二〇二〇年が終わる。新型コロナに振り回された一年だった。「旭川」の名が、「クラスター」という言葉とともに全国に拡散された。この負のイメージが、半年後か、一年後か、コロナの収束後にまで引きずらないかと心配している。

 東京や大阪、遠くは中国・北京の友人や知己から、「生きているのか?」と生存確認のメールや電話をいただいた。「自衛隊が投入された」と報じられるものだから、旭川が「都市封鎖」のような状態に陥っていると誤解されたようだ。

 繁華街三・六を歩いていると、三、四人のテレビクルーがカメラを回している。リポーターが「十二月の週末だというのに人の姿はまばらで、街は静まり返っています」とかなんとか。思わず舌打ちをする。「チェッ、東京と違うわい。もともと静かな街なんだ。今はちょっと静かすぎるけど」。

 都市封鎖になってはいないが、医療の現場は危機的な状況だという。私がかつて、頭の血管が詰まる病気で入院した“前科”があると知る友人は忠告する。「頭が弱いんだから、気を付けろよ。いま脳梗塞で倒れたら、すぐに手術をしてもらえない可能性があるぞ」と。彼は、医療機関で仕事をしている。

 聞けば、集団感染が発生した病院や福祉施設の職員が、本人は感染していないし、濃厚接触者でもないが、万が一家族に感染したらと考えて自宅に帰れず、ホテルから通勤している例が相当数あるという。

 あるホテルの関係者は、「うちは複数の病院の職員を受け入れている。スタッフは出来るだけ接触を避けるため、エレベーターホールに水やシーツ、タオルなどを置いて、定期的に部屋を替わってもらう。それでも、スタッフの精神的ストレスはかなりのものです」ともらす。

 三・六街の飲食店の主人の話。「十月の売り上げは、色んなプレミアムチケットのお陰で、去年よりも良かった。これで十一月を乗り切って、十二月は忘年会で少しもうけて、何とかなるなと思っていたら、クラスターで一気に予約がキャンセルさ。十二月の予約は、ほぼゼロ。がっくり来た。そのギャップのダメージは大きいよ」と肩を落とす。そして、「うちのように自分と嫁、あとはアルバイトで回している店は、申し訳ないけどアルバイトに休んでもらって、なんとか持ちこたえている。だけど、従業員をたくさん使って、高い家賃を払っている店は、無理でしょう。正月明けは、相当の店がシャッターを閉じたまま、そうなると思う。うちだって、あと半年この状況が続いたら持ちませんよ」と予言する。

 ホテルの宿泊予約は、「Go Toトラベルキャンペーン」の一時停止が発表された直後から、キャンセルが相次いでいるという。近郊の温泉ホテルの関係者は、「年末から年始にかけての予約が二百件ほど入っていて、二百五十件に届くかなと思っていたら、突然、Go Toは停止ですものね。一気にキャンセルで、八十件まで減ってしまいました」と声を落とす。「うちだけじゃなくて、日本中ですよね。どうなってしまうんでしょう。国が壊れてしまいますよ」

 国は、予算の配分は「コロナ前」を踏襲する考えのようだ。それをヨイショする報道もある。十九日付読売新聞の社説の見出しは「脅威対処へ能力向上を急げ ミサイル防衛」。政府が、地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の代わりに、同じ装備を搭載した護衛艦二隻を建造する方針を決めた、云々。日本を取り巻く安保環境は、厳しさを増している。北朝鮮は、云々。中国も、云々。だから首相は、慎重な姿勢の公明党に防衛力強化の重要性を粘り強く説明し、理解を得るべきだ。それが首相の責務であろう。という論旨である。

(工藤 稔)

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