あけましておめでとうございます。今年も頑張って書こうと思うのですが、なにせ、秋には満七十歳、すでに「古希」の老骨です。尖がっているフリをするのも中々骨が折れまする。そのあたりを察知しつつ読んで頂ければと思います。どうかよろしくお願いします。

 さて、今夏、東京五輪・パラリンピックが、“ガースー”首相いわく「人類がコロナに勝った証として」開かれるそうだ。首相は一月一日の年頭所感でも、東京オリンピック・パラリンピッは、今年の夏、世界の団結の象徴となる大会を開催する」と力強く宣言している。

 大晦日、東京都の新規感染者が初めて千人を超えて千三百三十七人に達した。全国でも過去最多の四千五百人の感染者が確認されたという。二日には東京都と神奈川、千葉、埼玉三県の知事が、新型コロナ対策の担当大臣に対して、速やかに緊急事態宣言の発令を検討するよう要請している。事態は切迫の度を増している。

 忘年会、新年会は大小にかかわらず全て取り止め。小中学生から、シニア世代のスポーツの大会、趣味の集まり、会議や集会も、旅行も、温泉も、ことごとく中止。ワクチンの接種が米国や英国で始まったと報道されているが、それが世界中に届けられるのは、いつの話だ? この状況で、オリンピック・パラリンピックを開催すると言われたって…。

 東京五輪は、二百五の国・地域から一万二千人以上の選手が参加し、観客動員数は約一千万人。九都道県にまたがる、四十二の競技会場で開かれる。移動は原則として公共交通機関。一般の人と同じ電車やバスや飛行機を使う。開会式の七月二十三日(金)から八月八日までの開催期間中、東京の人口はほぼ二倍になる。素朴に思う。「三密」はどうなるのか。

 一月一日付読売新聞は、森喜朗東京オリ・パラ組織委員会会長(83)のインタビュー記事を掲載している。ご丁寧にも三日付に続く長編である。その一節。

 ――観客がどうなるかとか、新型コロナウイルスの感染拡大が収まっていなかったらどうなるかとか、いろいろなことが言われる。問題は残されているけれども、それを解決していくだけの気迫で前に進めていくことが今、我々に求められていることだと思うのです。オリンピックを進める立場の者は力強く前進しなければいけない。躊躇していたり、迷いを見せたりしては絶対にいかん(中略)

 大会が始まるのは7月なので、今年春ぐらいまでみていけば、コロナの状況がどうなっているのか、世界中の状況もどうなるのかわかるし、それによって変化していくことですから。今は全部、観客があって当然だと考えています。(引用終わり)

 どうです、このなんとも勇ましい精神主義、玉砕主義、他力本願、自殺行為…。私たちの父や母や祖父や祖母が体験した、一九四五年に敗北したあの戦争を彷彿とさせる“進軍ラッパ”である。この精神論が、死ななくて済んだはずの幾百万の兵士と民間人と、そしてアジアの幾百万の民の命を奪った。歴史的事実である。そしてこうした“神風主義”は、えてして敗北の局面に現れる。それも歴史が教えてくれる。

(工藤 稔)

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