もう何が何だか、わけが分からなくなっている。「勝負の三週間」と言いながら、「Go Toトラベル」やら、「Go Toイート」やらを強引に継続して、国民に移動と飲食を推奨し、自らも俳優や政治家らと大人数で会食しまくっていた総理大臣が、突然、感染拡大の元凶は飲食業界だと言い出して、緊急事態を宣言する。

 おまけに、ドサクサにまぎれて新型コロナ感染症対応の特別措置法や感染症法、検疫法を改正し、「懲役」や「罰金」を科すんだと。例えば、特措法では営業時間の短縮を含む施設の使用制限やイベントの開催中止など、現行法で都道府県知事が行える「指示」を「命令」に変更し、違反した場合は三十万円以下の過料(罰金)。立ち入り検査を拒否した場合も二十万円以下の過料だそうだ。

 感染症法では、入院拒否や入院先から逃亡すると懲役一年以下または百万円以下の罰金。保健所が感染経路などを調べるために行う疫学調査を拒んだり、虚偽の回答をすると五十万円以下の罰金を科すという。

 「懲役」と言うことは、捜査したり、逮捕したりする手続きが必要になる。そこは警察が担当するのだろうが、それ以前の事実関係を調べたり、書類を作成するのは保健所の職員ということになろう。現状でも、感染が広がっている自治体の保健所は、旭川もその一つだが、パンク寸前の事態だ。その少ないスタッフに、これ以上の仕事・負担を求めるのか。

 完全に順序が逆だ。感染が確認されたが入院できず、自宅待機中に症状が急変して亡くなる方が少なからずいる。国が予算を削減し続けてきた公衆衛生の分野に、大胆に金を回し、医療との連携態勢を整備するのが先ではないか。コロナ禍があって、初めて「市立の病院があってよかった」と考えを改めた市民は少なくなかった。民間病院は“黒字経営”のために常に「満床」を強いられる。もちろん市立病院には不断の経営努力が求められるが、ある程度の“余裕”がなければ、この新型コロナ感染の急襲には対応できなかっただろう。

 話を戻す。「私権制限」「逮捕」「懲役」の言葉を聞いて、少し前の毎日新聞の記事を思い出した。昨年十月二十九日付の「特集ワイド」、作家の辺見庸(へんみよう)のインタビュー。「この国はどこへ コロナの時代に」の見出しの下に、大きな活字で「首相の『特高顔』が怖い」とある。菅義偉首相が、この紙面を見て、内閣官房の職員を呼びつけ、「なんだこの見出しは!」「この記事を読んでみろ!」と怒鳴ったという。

 辺見は、「自殺の増加」「時代の閉塞感」「排除型社会」「ファシズムが常態化している感じ」「社会の潔癖化」「貧困が自己責任のように語られる」など日本社会の現状を分析しながら、菅首相の「顔」について語り始める。

(工藤 稔)

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