居酒屋のカウンターで時々ご一緒する弁護士が、『身分帳』が映画化されて、全国公開されると電話で教えてくれた。「旭川刑務所を出所する場面から始まるから、旭川の人たちに見てもらいたい。なんかの形で、紙面で知らせてくれるとうれしいのだが」と。

 直木賞作家・佐木隆三のノンフィクション小説を原案に、西川美和監督が『すばらしき世界』と改題して映画化した。出生不明、殺人など前科十犯。人生の大半を獄中で過ごした男が満期で旭川刑務所を出所する。それが物語のプロローグ。天涯孤独、塀の外のルールを知らない男が、職探しを始める――。

 電話をくれた弁護士は、獄中で受刑者や刑務官らに糞尿を浴びせるなどして暴行・傷害・公務執行妨害で幾度も起訴された男の弁護を担当した。『身分帳』の新装版(講談社・二〇二〇年)に添載された「行路病死人―小説『身分帳』補遺」には、一九九〇年十一月、男が福岡市のアパート自室で脳溢血で急逝した折に、訃報を知らせた佐木に宛てて弁護士が送ったファクシミリの文面が収録されている。

 映画『すばらしき世界』は、二月十一日(木)から、イオンシネマ旭川駅前で上映される。役所広司主演。イオンには決して足を踏み入れないと誓いを立てた工藤は、悩んでいる。枕はここまで。

 一月二十六日号二面の『議会見たまま』に、旭川市は「市民交通傷害保険」を二〇二一年で終了すると、“再び”総務常任委員会で報告したとある。ちょっと経緯をおさらいすると――

 保険がスタートしたのは一九六九年度。五十嵐広三市政の時代だ。現在の掛け金は一口九百円(二口まで)で、交通事故でけがをした場合の通院・入院費用や死亡時には一口百万円の保険金が支払われる。低額の保険料で一定程度の保険金が支払われるとして、ピーク時の七九~九八年度には三〇%以上の加入率を維持した。しかし次第に加入者が減り、二〇年度には三・五%にまで減少した。

 市は、昨年八月の同委員会で「事業を請け負う損保ジャパンが引き受けを辞退し、他に引き受け手がないため、二〇二一年三月で終了する」と報告した。中村徳幸(公明党)が、「五十年以上も続いてきた制度を廃止するのに、市民団体などの意見も聞かず、パブリックコメントも実施していない」「西川市長の『対話から市政を動かす』との政治姿勢とかけ離れている」と強く批判した。

 担当の防災安全部は、市単独方式などによる事業継続も含めて、「市民団体などの意見を聞き、丁寧に検討を進める」として廃止方針を留保した。その「丁寧な意見聴取と検討」の結果が「再び、廃止を報告」である。

 昨年九月一日号の小欄は、次のように書いた。

(工藤 稔)

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