東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子参院議員(56)が就任した。会見で「私の任務は安全最優先の大会を実現し、アスリートが迷うことなく夢の舞台に立てるように、今の社会の空気を変えていくことだ」と述べたと報じられる。

 「今の社会の空気」とは、開催の是非を問う複数の世論調査で、「中止すべきだ」が三五%、「再延期すべきだ」が四五%、合わせて八〇%ほどの国民が、「今年夏に、オリンピック・パラリンピックを開催するのは不可能だ」と考えている事実だろう。

 新会長の政治の師である森喜朗・前会長は、女性蔑視発言の前に、講演で次のように述べている。

 ――世論調査を無視しろとは言わないが、世論調査にはタイミングと条件がある。今のコロナで、「オリンピックどうですか?」と聞かれたら、何と答えますか? 答えようがないでしょう。まして一般国民が、「明日、子どもや孫の成人式が中止になった」「来月結婚式の予定をどうしようか」と、そういう時期に、なぜあえてこういう「五輪をやるべきか」「延期すべきか」「中止すべきか」という世論調査をするのか。世論の動向を見るのは大事なことだけど、これをこうして発表しなければならんのかなと。私には疑問がある。

 森氏は、二月二日に行われた自民党本部の会合で、「新型コロナウイルスがどういう形だろうと必ずやる」「やるかやらないかの議論は放っておいて、どうやってやるかだ」とも述べている。なんと勇ましい、旧帝国軍人的な突撃ラッパだろう。

 ガースー首相も、嘘つき前首相の子飼いの新女性五輪相も、横文字好きの小池都知事も、本気で七月二十三日に、世界二百以上の国・地域から、一万二千人もの選手が東京に集まって、オリンピックスタジアムで開会式が開催できると考えているんだろうか。国民の八割が「無理だ」と思っているのに。あと五カ月しかないのに。想定している観客動員数は、一千万人以上だというのに。

 おそらく、政治家も含めて関わっている人の大多数は、本音では「無理よ」と知っている。でも、それを言っちゃあいけないんだな、きっと。まるで、あれよ、アンデルセンの童話『裸の王様』。首相も、都知事も、五輪担当大臣も、組織委員会幹部も、全員が裸の王様か家来になっちゃってる。ぜーんぶ透明の服を着ちゃってる。

 でも真っ当な人は、いる。「王様は服を着ていないじゃん」と声を上げる人はいる。東京から遠い、五輪の恩恵を受けにくい、地方に、いる。各紙の報道によると、島根県の丸山達也知事(50)が十七日、松江市で開かれた臨時の東京オリンピック聖火リレー県実行委員会で、県内の聖火リレーの中止を検討していると表明した。丸山知事は、「政府の認識は危機的。東京都は五輪を開く資格がない」と述べたという。

 十八日付朝日の記事を引用すると。

 ――丸山知事は、新型コロナの「第三波」以降、都内の保健所が感染経路をたどる「積極的疫学調査」の主な対象を医療機関や高齢者施設などに限定し、また都内で適切な医療を受けられずに自宅で亡くなった人がいる、と指摘。「感染拡大を助長する世界的イベントの開催は理解できない。五輪開催に反対せざるを得ず、プレイベントの聖火リレーにも県として財源や人員を充てられない」と述べた。(後略・引用終わり)

(工藤 稔)

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