連休中の二日朝、台所で食器を洗いながら、背中でNHKのテレビニュースを聞いていた。アナウンサーが次のように伝える。

 ――中国の新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって、国際社会の批判が強まる中、帰国すれば迫害を受けるおそれがあるとして、去年、難民として日本で保護された中国人は、受け入れを始めた昭和五十七年以降、最も多くなったことが分かりました。

 日本では、難民条約に基づき、人種や宗教、政治的意見などを理由に、帰国すれば迫害を受けるおそれがある外国人を難民として保護しています。

 出入国在留管理庁によりますと、去年一年間に難民と認定された四十七人のうち、中国人は十一人と全体のおよそ四分の一を占めていて、日本が難民の受け入れを始めた昭和五十七年以降、最も多くなったことが分かりました。

 中国をめぐっては、新疆ウイグル自治区でウイグル族ら少数民族に対して行っている行為が、人権侵害にあたるなどとして、国際社会の批判が強まっていて、難民と認定された中国人が増えたのは、こうした事情を考慮したものとみられます。

 一方、難民の認定基準については、欧米と比べて厳しいという指摘があることなどを踏まえ、基準を満たさないケースでも保護の対象とすることなどを盛り込んだ、出入国管理法などの改正案が、今の国会で審議されています。(引用終わり)

 このニュースだけ聞かされると、事前の情報を持たない者は、「ああ、日本政府は中国の人権侵害を考慮して、たくさんの中国人を難民として受け入れているのだな。ニッポンはなんていい国なんだろう」と思わされてしまうに違いない。なんと作為的な報道なのだろう。

 そもそも二〇二〇年に難民と認定された四十七人という数である。昨年は新型コロナの影響で、申請者は前年比六割減の三千九百三十六人だった。認定率は一・二%。一九年の申請者は一万三百七十五人で、認定されたのは四十四人。認定率はわずか〇・四%。一八年も〇・四%、一七年の認定者は二十人、認定率はわずか〇・一%だった。

 欧米の国々と比べると、日本の認定者数、認定率が際立って少なく、低いことが分かる。二〇一九年、ドイツでは五万三千九百七十三人(認定率二五・九%)、米国四万四千六百十四人(認定率二九・六%)、カナダ二万七千百六十八人(認定率五五・七%)。

 日本は、難民を受け入れたくない国なのだ。労働力不足を「技能実習生」という“ごまかしの”制度をでっち上げて呼び込んでおきながら、「移民」として受け入れることを拒否し続ける。

 では、NHKがなぜこの時期に、こんなニュースを報道したか、その意図を八日付朝日の記事から読み解こう。「入管法改正案 採決で攻防」「野党、死亡事案の解明求める」の見出し。リードを引用する。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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