新型コロナのワクチン接種の予約受付が十三日から始まるというので、その朝、かかりつけの医院に電話をかけた。様子を聞こうと思ったのである。「混雑しているだろうな」という予測は的中した。何回かけても、「ツー ツー ツー」である。


 午後三時過ぎ、定期の通院を兼ねてその医院に向かった。いつもなら待合室も空いている時間帯のはずが、玄関前に人が並んでいる。聞けば整理券を手にワクチン接種の予約手続きを待っている人たちだった。
 さほど広くない玄関フロアにテーブルを置いて、二人の女性スタッフが対応している。いつもの落ち着いた雰囲気と違って、何やら医院全体が殺気立っている空気感。中に入ると、カウンターで「今から予約はできないの?」とスタッフに訴える高齢女性の姿。「午前中に電話したら、午後からも受け付けるって言ったのに…」と。

 顔見知りの看護師の話によると、早い人は午前六時前から並んでいたそうな。列が長くなって交通に支障を来たす状況になったため、七時には整理券を配付し始めた。三百三十枚の整理券は一時間で配付終了になったという。「もう、大変な騒ぎです」と困惑を隠さない。

 かかりつけ医によるワクチン接種は二十四日から始まる。この医院では、三人の看護師が接種にあたる。接種後に十五~三十分の経過観察を要するため、三台のベッドを用意する。件の看護師は「午前・午後合わせて、最大四十人に接種できるかな、という感じですね。今日予約した三百三十人に打ち終わるのに一週間から十日近くかかる計算です」と話した。通常の診療を続けながら、同じフロア、同じスタッフでワクチン接種を担う。「どうなっちゃうんでしょうね。想像したくありません」と笑った。

 医師は「僕も、うちのスタッフも、まだ一回しかワクチンを打っていない。二十四日から接種が始まるから、どうにか間に合わせるために二回目を打つ予定なんだけどさ。これって、泥縄の極地だよね」と苦笑いしながら、いささか疲れた表情で血圧を計ってくれた。

 高齢者にワクチンを打つ医師や看護師が、いまだにワクチン接種を終えていない。接種の対象となる市内の医療従事者は約一万八千人。当初は、国の方針に従い、今月初旬には全員二回目の接種を終えているはずだった。ところが、十日まで二回の接種を終えたのは約六千人。五千人は一回だけ、残る七千人は一回も打っていない。

 三月上旬から始まった医療従事者へのワクチン接種は、規模が大きな医療機関では比較的順調に進んでいるが、かかりつけ医など規模が小さなクリニックなどは遅れている。そこで旭川市は、緊急的に医療従事者を対象にしたワクチンの集団接種を行うことを決めた。十五日から六月十三日までの土・日曜日、市総合防災センター(東光二十七ノ八)で行う。

(工藤 稔)

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