六月二十九日号の小欄「旭川医大で、道新女性記者逮捕のニュースに思うこと」について、読者からメールが届いた。七十歳代の現役の医師。医大の関係者ではない。名前も明記されているが、伏せる。その要旨を。

 ――真実を報道する為に果敢に取材に努めようとする記者魂は理解できる。だが、それ以上に「特ダネ」を取って、自分を認めさせたいという不純な感じが見える。勇み足と言われても仕方ない。

 ――女性記者の逮捕、拘留に対して抗議するのなら相手は医大ではなく警察ではないのか? 実際に公権力を行使したのは警察なのだから。

 ――報道の自由は記者のみならず一般の市民、国民にとっても重要な事だ。しかし、目的が崇高だとしても手段が不正であればその記事の価値を損なうものだろう。記者は取材の為なら多少のことは許されると、取材される方の都合などお構いなしに、攻めてくることがままある。これまでも土足で踏み込むが如くの取材で、迷惑を被った事が何度かある。

 北海道新聞社は六月二十二日付朝刊で、同社記者が建造物侵入の容疑で逮捕された事件について、「社内調査報告」を掲載した。翌日、朝日、毎日、読売の各紙が、その「報告」について解説的に報じているから省く。

 私の感想として、小林亨・編集局長のコメントの中に、「取材中の記者が旭医大に常人逮捕されるという事態が生じたことは遺憾と言わざるを得ません」とあり、旭川医大から届いた抗議文に対する回答にも、同じ表現が使われていることに、違和感をもった。「遺憾」って、政治家や高級官僚が、何かをごまかそうとしたり、関心を逸らそうとするときに使う、そんなニュアンスを感じる。で、改めて広辞苑を引いてみた。「遺憾 のこりおしいこと。残念。気の毒」とある…。

 もう一点、事件の一報で、実名を出したのは道新だけだった。なぜ実名報道だったのか。「報告」には一言の説明もない。

 日本ジャーナリスト会議(JCJ)が九日、「建造物侵入罪の濫用は取材行為への脅しに直結 北海道新聞記者の逮捕に抗議する」と題する声明を発表した。その核の部分を。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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