自宅は、旭橋と旭西橋の間、新橋の下流左岸にあり、二階からは石狩川が眺められる。十五日午後、すぐそばの河川敷をクマが歩いたか、走ったかして、上流に向かったものとみられる。その日午後、上空を道警のヘリコプターが轟音をまき散らして何度も飛来し、堤防上には野次馬が集まった。

 二十日号のあさひかわ新聞「事件ファイル」に、次のようにある。

 ――十五日午前八時十五分ごろ、市内忠和三ノ八付近で、車で走行中の人が忠別川の中州にいるクマを発見。

 ――十六日午前六時三十分ごろ、市内花咲町五で、花咲大橋を歩いていた人が石狩川を泳ぐクマを発見。一般住宅から百㍍ほど。

 ヒグマの生態に詳しい、NPOもりねっと北海道代表の山本牧さん(65)が、今回の市中心街の河川敷に入り込んだクマについて、フェイスブックで詳細なリポートと、対策についての指摘・提言をしている。同法人は、比布町との境界にある公園・突哨山の指定管理者を務めていて、ヒグマ調査の経験も豊富。山本さんは「ヒグマの会」の副会長。いわば“ヒグマのプロ”である。市環境部は今回の事態で、山本さんのアドバイスを受けていた。

 二十一日の山本さんの投稿には、二十二日からの五輪連休中、市がクマ調査を「ペースダウン」することへの強い懸念が記されている。次のように。

 ――間違いなく言えるのは、この数日間の効率的な調査を止めれば、せっかく追いついたヒグマの行動がまた分からなくなる、ということです。

 それこそ突哨山付近から永山、末広、旭橋、嵐山、美瑛川と忠別川などと、旭川市の人口密集地のほぼ全域のどこにいるのか分からなくなる。

 もし、運良く市の願望のように市外やどこかの山にクマが出て行ったとしても、それが確認できないので、サイクリングロードや公園施設は、何となくほとぼりが冷めるまで閉鎖が続くことになりかねない。もう大丈夫? と聞かれても、私は答えようがない。調査は計画的、継続的にやるからデータを読み取れるのです。

 市に対して、山本さんは次のような対策を提案していた。

 「ベアドッグ(ヒグマの追跡や追い払いの訓練を受けた犬・筆者注)による朝や夕方から夜にかけての臭いによる広域サーチと暗視スコープで、居場所を確認する。ほぼサイクリングロードや堤防上から実施できるので、調査員の危険やヒグマへの刺激はごく少ない。この数日で居場所をある程度突き止め、最後はドローンで確認して監視しつつ、猟友会に出動を要請し、駆除してもらう」

 このクマは、用心深く行動も穏やかだそうだ。一度だけ、神居地区の住宅街に堤防を越えて入り、ゴミを出しに来た人に目撃されたが、その後は河川敷の河畔林に身を隠し、夜だけ動いている。無邪気な動物愛護の精神に富む私などは、檻で捕まえるか、麻酔銃で眠らせるかして、「殺さないで山に帰してやればいいのに」と思ったりする。だが、のぼりべつクマ牧場で麻酔銃の発射と効果の実験を経験している山本さんいわく、「野外で麻酔銃を使う、なんてことは政治家のパフォーマンスに過ぎません。距離二十㍍で発砲し、痛みに狂うクマと三十分間競走して下さい」とのこと。問題外だ。

 檻で捕まえたとしても、クマは暴れて歯や爪を傷めてしまうことが多い。また、重いので運搬が難しく、作業に当たる人も危険。そして、どこに放すか。山本さんは、次のように書く。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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