「ぼったくり男爵」に象徴されるオリンピックのあまりの拝金体質に心底うんざりして、我が家はテレビ中継は見ないと決めた。新聞は連日一面で、日本人選手の「金」だか「銀」だかを大きく報じているが、読みたいとも思わない。

 家人は「ニュースもオリンピックだから、ラジオをつけたら、ラジオまでオリンピックよ」と怒る。新型コロナの感染爆発、緊急事態宣言の拡大と延長、国民に「動かず、家で静かにしてろ」と自粛を強要する一方で、「ニッポン チャチャチャ」である。なんだかなあ…。

 今日も三十五度を超える熱波。何かを深く考えるのも億劫だ。いやな思い出として、間違いなく記憶に残る夏になる。枕はここまで。

 障がい者を雇用して事業所を運営している六十歳代の経営者から、「ちょっと話を聞いてほしいんですが」と連絡があった。くわしい来歴を知っている間柄ではないが、その仕事ぶりから、信頼できる、顔見知り、である。以下、彼の「哀しくなるような」話である。通じる人には、きっと分かってしまうだろうが、彼との約束で社名は伏せる。

 ――二〇二二年の「日めくりカレンダー」を作るという企画でした。三百六十五日の一枚一枚に、この地域の会社やお店の名前を広告として載せる、ということです。

 ――企画から印刷、製作まで、「オール旭川」でやる。製作の段階で、うちのような障がい者施設が何カ所か仕事を受注できる。いい企画だなあと思いましたよ。

 ――コロナ禍で、イベントで使うタオルの「袋詰め」のような軽作業は、激減しています。そこに、日めくりカレンダーの話です。仲間の障がい者施設にも声をかけました。

 ――地元の会社は、三百六十五枚をリングでまとめる形の日めくりを提案したそうです。リングにまとめる軽作業が私たち小さな障がい者支援事業所に発注される、はずでした。

 ――いろいろ事情があったのでしょう。結局、国内トップのシェアを持つ東京の会社に決めたそうです。リングでまとめるのではなく、ちぎる形で、地元の会社の見積より、かなり安かったと聞きました。

 ――もちろん商売ですから、より利益が出るところに仕事を発注することにケチをつけるつもりはありません。ただ、この日めくりカレンダーのそもそもの発想は、「コロナ禍で元気がない地元企業を励まそう」だったはずです。

 ――妻が代表の店にも「広告協賛のお願い」が来ています。その企画書には、「三百六十五日そのすべてに地域の顔やメッセージを載せたカレンダーは、購入者にはぜひ来年にはそのお店や企業をめぐってほしい、企業にあきらめずに商売を続けてほしい、そんな思いを込めて立案した…」「希望を湛えた、地域を照らすカレンダー商品となるよう…」とあります。

(工藤 稔)

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