子ネコの額ほどの、朝夕水やりができる広さの畑でさえ、この異常気象の影響を受けている。例えば、ズッキーニが収穫できなかったり、トマトの実が大きくならなかったり。畑作農家の困窮やいかに、と想像する。

 畏敬する有機農業先駆者、農業法人の社長(72)は、「ジャガイモはマルチだから、さほどの影響はないと思うが、小豆は大変だ」と言う。「トウモロコシは水分不足と、昼夜の温度差がないから、味が良くない」と。私が「コメはいいでしょう?」と尋ねると、「量的にはとれるけど、これも昼夜の温度差がないから品質と味は落ちるだろう」と予想する。

 旭川地方気象台に聞いてみた。今夏の「高温・少雨・多照」は、観測を始めた一八八八年(明治二十一年)以来、やはり記録的だそうなのだ。

 七月の平均気温は、二十四・四度。平年は二〇・七度ということで、観測史上ダントツの第一位。ちなみに第二位は一九七八年の二十三・九度だそうだ。

 降水量も平年の七月は百二十九・五㍉㍍に対して、今年は十八・五㍉㍍。平年の一四%しか降っていない。これも観測史上一位。日照時間こそ歴代四位だが、平年よりほぼ五〇%も多い二百三十六・九時間。明らかに「干ばつ」である。

 農業者の友人知己の顔を思い浮かべる。そして思う。彼らは概して泣き言を言わない。出来る限りの創意工夫を凝らしたら、「あとはお天道様にお任せよ」という潔さがある。そんな彼ら、彼女らが、どんな秋を迎えるのか。二〇二一年の盛夏である。枕はここまで。

 島根県の丸山達也知事(51)が、県内の聖火リレー中止を検討すると表明した逸話を二月の小欄で書いた。その丸山知事が、東京や神奈川などの首都圏で新型コロナウイルス感染者が激増している情況を受けて、「基礎疾患がある人の一時避難的な帰省を支援する」と発表した。「首都圏にいる島根県民の近親者の命を守るため」だそうだ。

 七月二十九日、県が公表した支援策によれば、対象は東京、埼玉、千葉、神奈川の一都三県に居住し、慢性の呼吸器や心臓の病気などの基礎疾患があり、島根県民の一親等か二親等に当たる親族。帰省して六泊七日から十三泊十四日の間、ホテルなどに宿泊する費用を、県が一泊当たり半額(上限五千円)を補助する。

 丸山知事は、「緊急事態宣言発令中の(感染者)急増で、(感染者は)今後も増えると見込まれる。『自宅療養を病床のように使って』という都の現状は、健康状態を確認する態勢を整えているとはいっても、医療崩壊と理解するのが自然。県民の近親者が、病状が悪化しても医療を受けられないといった状況に置かれることは避けたい」と説明したそうだ。

 島根県は、県民に対して、「県外からの帰省、県外への帰省は控えてください」「また、県外への旅行についても、控えてください」という「お願い」を発表している。その「お願い」には、次のような丁寧で、具体的な“追伸”がある

(工藤 稔)

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