二〇二一年、最後の小欄です。呻吟しながら、どうにかこぎ着けました。新しい年に向けて、明るい話題で締めくくろうと思います。公立大学の開学です。

 「旭川に公立ものづくり大学の開学を目指す市民の会」が発足したのが二〇一一年八月のこと。十年も前の話だから、関わった者でも記憶が薄れている。歴史は大事だ。軽くおさらいしよう。

 東海大学旭川キャンパスの閉鎖が発表された事態に危機感を持った中小企業家同友会旭川支部に加盟する企業経営者らが、シンポジウムを開いたのがはじまり。今は亡きカンディハウスの創業者・長原實さん(二〇一五年十月死去)に無理に会長をお願いし、継続的に講演会やシンポジウムを開催した。二〇一二年末には、街頭などで呼び掛けた「公立ものづくり大学の開設を求める」署名、四万三千四百十三筆を市長と市議会議長に提出した。

 市民の会の運動に呼応するように、旭川大学が市に対して「公立化」を要望したこともあり、当時の西川将人市長は一三年度予算に五十万円の調査費を盛り込んだ。行政が動き始めたのはここからだから、予定通り二〇二三年四月に旭川大学が公立化されれば、丸十年を要してやっと公立大学が誕生することになる。

 新大学は、経済学部経済学科(入学定員百人)、保健福祉学部・コミュニティ福祉学科(四十人)、同・保健看護学科(六十人)、短大は食物栄養学科(五十人)、幼児教育学科(百人)となる。すでに大学法人の理事長(高瀬善朗・元旭川副市長)と学長(三上隆・元北大副学長)の予定者も決まった。この二氏を含む四人による開学準備委員会が、新大学の名称や理念など新大学の具体的な“骨格”について協議することになる。

 新大学に市民の会が求めた“ものづくり系学部”が開設されるのは二〇二五年四月。新学部・地域創造デザイン学部(仮称)で、ものづくりデザイン学科(三十人)と地域社会デザイン学科(五十人)の学生たちが学び始める。大学・短大の入学定員のうち二割程度は「地域枠」として地元に割り当てられるそうだ。

 現・旭川大学(四年)は入学金二十万円、授業料年額八十万円(保健看護学科は百二十万円)。公立化されれば、入学金三十万円、授業料年額五十四万円となる予定だ。四年間で約百万円の減額となる。親元から通える地元に公立大学が誕生する、目に見える恩恵だ。

 二人の子どもが埼玉と神奈川の私立大学に進学した企業経営者(54)の話。

 ――二年間、姉弟の大学が重なった。奨学金を使って、月の仕送りは一人十万円。アパートの家賃は別で、こちらから振り込む。都内じゃなかったから六、七万円だった。授業料は年間百四十万円くらい。下の子の学費は、祖父母が出してくれた。うちだけで二人はとても無理だ。一人でも、やっとという感じだね。

(工藤 稔)

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