それを知ったのは、「しんぶん赤旗」の報道だった。他紙で読んだ記憶はない。同僚記者も、「読んだことも、ラジオやテレビで耳にしたこともないな…」と言う。

 「それ」とは、読売新聞大阪本社と大阪府が「包括連携協定」を締結したというニュース。記者OBの友人にメールで問い合わせると、「ジャーナリスト有志の会の声明で知った」とのこと。やはり大手紙は報道していないようだ。その理由はわからない。ジャーナリスト有志の会の「声明」のサワリを引用しよう。

 ――読売新聞大阪本社と大阪府が十二月二十七日、情報発信など八分野で連携・協働を進める「包括連携協定」を結びました。(中略)

 報道機関が公権力と領域・分野を横断して「包括的」な協力関係を結ぶのは極めて異常な事態であるだけでなく、取材される側の権力と取材する側の報道機関の「一体化」は、知る権利を歪め、民主主義を危うくする行為に他なりません。私たちジャーナリスト有志は今回の包括連携協定の締結に抗議し、速やかに協定を解消することを求めます。(中略)

 ――吉村洋文知事は協定締結後の記者会見で「協定締結にあたり、報道活動への制限、優先的な取り扱いがないことを双方確認している」と主張しました。

 
 また読売新聞大阪本社の柴田岳社長は、協定を結ぶことでメディアに自己規制が働くのでは、との質問に「懸念をもたれる向きはわかるが、読売はそうそう、やわな会社ではない。記者の行動規範には『取材報道にあたり、社外の第三者の指示を受けてはならない』『特定の個人、団体の宣伝のために事実を曲げて報道してはならない』と定められ、これに沿って公正にやるとなっている」と反論。一方で、「新聞社にとっては将来的には『ウィンウィン』の関係。萎縮しないかは、『萎縮しないでしょう』というしかない」などとあやふやな発言に終始しました。(中略)

 ――読売新聞大阪本社にはかつて、大阪社会部を中心に、反権力・反差別のジャーナリズムの気風がありました。現在の読売新聞内にも、今回の協定締結に心を痛めている記者が数多くいます。志を持った記者が心折れることなく、尊厳を持ってジャーナリズムに専念できる環境を取り戻す必要があります。(後略・引用終わり)

 十一日付「しんぶん赤旗」は、この連携協定について、各界の識者の談話を掲載している。その一人、「読売」OBのジャーナリスト、大谷昭宏さんは次のように話す。

 ――(前略)大阪の場合、府・市一体で日本維新の会が圧倒的な権力を握っています。二〇二五年の大阪万博をなんとしても成功させたいようですが、コロナ禍で開催自体がどうなるかわからない。今のうちからメディアを抱き込んで自分たちに都合のいいことを宣伝してもらうために協定を結んだとしか思えません。コロナ禍で多くの人たちが反対していたにもかかわらず強行された東京オリンピックと構造は似ています。(中略)

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

●お申込みはこちらから購読お申込み

●電子版の購読は新聞オンライン.COM

ご意見・ご感想お待ちしております。