画像 酒屋さんの店内で、おいしいお酒と手作りの肴を――。市内六ノ西四にある小川商店(小川勇一社長)で、月に一度、店主の味のある蘊蓄(うんちく)を聞きながら、いろいろなお酒を楽しむ会が開かれている。名づけて、「LOVEの会」。お酒を買いに来るお客たちの「解説付きでお酒を飲める会を企画してほしい」という声に応えて始まった会は、四十八回を数える。

 会員は六十五人ほど。二〇〇一年(平成十三年)に正式にスタートする以前も、店内にテーブルとイスを並べて不定期にお酒と肴を楽しむ会を開いていた。

 記者が「酒の小売店の経営は、大手やコンビニの台頭で厳しいでしょう。この会は、町の酒屋さんの生き残り策の一つですか?」と質問すると、小川社長は、破顔一笑、「潰れる時は、潰れます。悪あがきはしませんよ。この会も、純粋にお酒を飲んで楽しむことだけが目的。互いに名前も職業も知らない、この会だけで同席する人たちが、一夜、仲良く、楽しくお酒が飲めれば、それでいいんです」と話した。

 毎回、種類の違うお酒、小川社長が厳選した銘柄を揃える。年末、十二月二十二日の第四十八回のLOVEの会では、五種類のシャンパンが用意された。産地や醸造法、歴史など、それぞれのシャンパンにまつわる話を語りながら、栓を抜く。肴の担当は、小川社長の妹、正子さん(58)。毎回、手作りの料理が参加者たちを喜ばせる。後継ぎの勇樹さん(27)は、フランスワインを売る達人のライセンス「コンセイエ」を取得。この会のために、飲食業の許可も取得したという凝りようだ。

 新年一月の会では、毎年大吟醸を楽しむのだそうだ。そして二月は、四日の立春に合わせて、男山の「立春朝しぼり」と打ち立てのソバというメニュー。

 会費は、酒の種類にかかわらず毎回三千円。「赤字ですね。酒の原価だけで足が出ていますから」と小川社長はさらりと言う。「ただ、自分が売りたいと思う酒の評価をお客さんから直接聞くことができる。いわば、有料の試飲会です。お金を出してでも欲しいお客の反応を直に得られる。それが最大のメリットですよ」と。町の酒屋さんの心意気を見た――。