丸ちゃん、現在負傷中だ。十一月二十四日の福島競馬最終日、パドックから本馬場に入場する前の地下馬道で、馬がひっくり返ってしまい、右足が下敷きになった。靭帯が三カ所延び、足首も捻挫。怪我をした直後は、右足を大きく引きずり「イテエ」と声を発していた。さすがにその週の調教は休んだが、十一月二十九日の東京競馬では六鞍騎乗。パドックで馬に向かって走っていく姿はまだぎこちなかったが、そこはプロ。乗ってしまえば、負傷を感じさせないレース振りでホッと胸をなでおろしたものだ。

 しかし、レース後に聞いてみると「やっぱり痛いです」。そうだよなあ、ほんの数日で治るわけがない。「膝の内側が内出血していて、血を抜かれた時は、こっちの血の気も引きましたよぉ」と笑っている丸ちゃんを前に、つくづく騎手は危険と隣り合わせだし、怪我がつきものなんだなあと実感させられた。

 週に二回、先輩騎手から紹介してもらった整体治療に、茨城県の美浦から都内まで通っている。「まずは仕事ができればいい。そのための治療ですね。患部をグイグイ押されるし、ボキボキ鳴らされるし、痛くて行くのが憂鬱になりますけど」と言いつつも、調教は三日間休んだが、動かなかった足が動くようになったし、負傷から五日後にはレースに参加できたのだから、整体の効果はあったのだろう。

 「冷やすと筋が硬くなるので、温めるようにしています。調教の前にお風呂に入って、終わった後も入って、夜寝る前も入って…。サポーターをしてカイロも膝の所に入れてます」。ともかく馬に乗り続け、かつレースに影響がないように、そして後遺症が残らないようにキレイに治すために、日々怪我と向き合ってケアにつとめる毎日だ。

 また、どんな馬の動きにも対応できる体のバランスについてや、必要な筋肉をつけるにはどうしたらいいかなどを整体の先生から教わったこともあり、自分の体と向き合ういい機会にもなったようだ。「怪我とは関係なく、(馬に乗るために)いい体を作っていくために、自分のできることをちょっとずつでもやって行こうと思います」と表情は明るかった。

 先週末もまだ痛みはあったようだが、それを感じさせずに騎乗を終えた。さすがはプロだ。けれども、丸ちゃんだけがすごいのではない。落馬負傷の後遺症に悩まされ、痛みと闘いながらも、平然と乗っている騎手はたくさんいる。それがプロのジョッキーなのだ。丸ちゃんもそのプロ騎手の一人として、怪我で得た教訓を胸に、今週末からは中京競馬場で騎乗予定だ。

負傷しても休まず騎乗。笑顔も見えます=12月6日(土)中山競馬場