新しい年の幕開けの中央競馬は一月四日から。四日、五日と丸ちゃんも計十二鞍騎乗したが、残念ながら勝ち鞍なし。「後輩が新年早々、二勝あげましたからね。悔しいですけど刺激になりました」と丸ちゃん。一月十日からは、中山、京都の中央場所の他、中京競馬が始まり、再び三場開催。後輩にいい刺激を受けつつ臨む中京競馬で、本年度の初勝利!のシーンが見られそうだ。

 二〇〇九年の目標を聞くと「特にないです」とか「言いたくないです」とか、相変わらず私に対して反抗的?な丸ちゃんだったが「年間五十勝、特別(※)十勝ですかね」とボソッと、教えてくれる。話が進むうちに徐々に口も滑らかになってきた。「デビューした頃の気持ちを忘れずに、いろいろな面でだらしなかったので初心に戻ってやっていきたいです。そうすれば、技術も上がるし、成績もアップすると思うんですよ」。その言葉からは、勝ち星の数だけにこだわっているのではないという気持ちが伝わってきた。要は中身。ただ単に「今年は五十勝」と数字だけを挙げるのも抵抗があったのかもしれない。

 「内部(競馬の世界)だけではなく、もっと外にも目を向けたいですね。外部からの刺激が少な過ぎるんですよね。内部にもすごい人はいますけど、外の世界にもすごい人はいますからね」。競馬界は特殊だし、そこにどっぷりつかってしまうと、視野が狭くなりがち。限られた枠の中だけで満足していては、成長は望めない。人間的な成長が、騎手としての成長にもつながる。丸ちゃんもそのあたりに気づいたのだと思う。

 「食事にも気をつけたいです。なかなか自炊はできませんけど、外食するにしても、ちゃんとヘルシーなものを選ぶようにするとか。他の人と一緒のものや量を食べているわけにはいかないですし」。騎手は体重管理が重要なポイントになる。食べたいだけ食べていれば、当然、体重は増加する。後で減量に苦しむのは本人だ。それに騎手もアスリート。他のスポーツ選手と同様、食事面ももっと見直されていいはずだ。

 「外部にも意識的に目を向けるように。そして自分で考えて、計画を立てて、行動していきたいですね。そうすれば得るものも大きいと思うんですよ」。飛躍の年になった昨年だったが、それはあくまで通過点。油断をすれば、すぐに成績に現れ、騎乗数が減少する厳しい世界で、今後も存在感を示していくためにはどうしたらいいか。彼は自分と向き合いながら、しっかり考えている。そして、取材の終わりに丸ちゃんが発した「今年はプロとしての自覚を持ちたいです」という一言に、二〇〇九年への思いが凝縮されているようだった。

(隔週に掲載します)

 

※特別競走とは一般競走と違って、事前に特別登録を必要とする競走。特別競走には、現在の中央競馬ではすべてレース名がつけられている(札幌開催では「ニセコ特別」「藻岩山特別」などがある)。

高崎競馬の元女性ジョッキーで、競馬レポーター・赤見千尋さんの取材を受け、今年の抱負を語る丸ちゃん