旭川市民劇場の九月例会が九月五日(月)と六日(火)、市公会堂で行われます。

 市民劇場は、旭川ですぐれた演劇を観ようと発足した会員制の演劇鑑賞団体。会員の会費で運営し、年間六つの舞台を楽しみます。

 九月例会のトム・プロジェクト「百枚目の写真~一銭五厘たちの横丁~」は、アジア太平洋戦争のときの実話をもとに作られた作品です。

 原作は、児玉隆也著、桑原甲子雄写真で、一九七五年に出版されました。戦時中、桑原は戦意高揚のために在郷軍人会の依頼で、出征した兵士に送る留守家族の写真を撮影しました。戦後、その九十九枚のネガを見つけた児玉が、写真に写った家族を捜し歩いたというルポルタージュです。「一銭五厘」とは、召集令状の郵送代で、「赤紙」のことをそう呼んでいました。

 赤紙一枚で、平凡な庶民の、家族の営みが消されていく怖さ。国策の元、権力を持たない、名もなき市民が、「運がなかった」の一言で片づけられてしまう理不尽。フクシマの原発事故で故郷を追われ、家族の日常がめちゃくちゃにされた現在とダブります。

 秘密保護法、安保法制、憲法改悪…、戦争が出来る国にゆっくりと、確実に近づく状況の中にいる私たち。敗戦の色が日増しに濃くなる昭和十八年と、戦後の高度経済成長が目覚ましい昭和四十年代の下町を舞台に、「百枚目」の写真を撮らせてはならないという強いメッセージが込められた物語です。

 五日は午後六時半から、六日は午後一時半から、開演です。

 市民劇場は、入会金二千円、毎月の会費は大人二千五百円、大学生千円、高校生以下五百円。託児も利用できます。