朗読のグループ「こるり」のチャリティー朗読会が十四日午後、旭川聖パウロ・ルーテル教会(七ノ八)で開かれた。盲導犬育成を支援するチャリティーも目的の一つ。目が不自由な芳賀智恵子さん(83)と盲導犬のアイル号(6)も最前列で耳を傾けた。

 第一部では、三浦綾子の長編小説「塩狩峠」を三浦綾子記念文学館の森下辰衛・特別研究員が十五分の一ほどのダイジェスト版に構成し、森下さんも加わって、五人が朗読した。

 作品は一九〇九年(明治四十二年)、現在のJR宗谷本線の塩狩峠で起きた事故をもとに書かれた。峠の途中で最後尾の客車の連結が外れ、勾配を下って暴走。乗り合わせていた鉄道職員・長野政雄が、その身体で車輪を止めて大勢の乗客の命を救った。

 約一時間の朗読の後、森下さんが「にもかかわらず愛することの幸い」と題して解説した。三浦は戦中、教師として教え子たちを戦地に送り出した自責の念から、病気を患い、自暴自棄になった自身の〝暴走〟を止めてくれた二人の男性、前川正と三浦光世の向こうにイエスがいた、という感謝の気持ちを表現したのではなかったかなどと、この小説が伝えようとする愛や信仰、生きることの意味を丁寧に読み解いた。

 天井が高い白亜の会堂、十字架を背景に長友あゆみさんのピアノの調べが静かに流れる中、平泉美智子さん、押之見哲也さん、山崎健一さん、こるりさん、そして森下さんの朗読に、集まった二十人が頭を垂れて聞き入った。

 第二部では、江國香織の「桃子」や宮沢賢治の「無声慟哭」なども朗読された。