宮下通一・二丁目から神楽二条三・四丁目に渡る忠別橋のたもと、忠別川の右岸に沿って整備された忠別橋公園で、熟年の男性二人が、彫刻作品の修理作業に精を出している。

 作品の名前は、『はじまりの舟』。二〇〇二年(平成十四年)、旭川彫刻フェスタの公開制作でつくられた。制作責任者は造形作家の藤井忠行さん(73)。友人の写真家・野原典雄さん(89)ら四人が「ユニット」を組んで手伝った。

 また、制作の様子を見学に来た人も制作に関われるよう工夫され、市民参加型の実験的な造形として誕生した作品だ。

 大きさは、長さ十・三㍍、幅一・四㍍、高さが一・七㍍ほど。材料は木と鉄。舳先を空に向けた舟が、斜面から飛び立つような姿が、新たな旅立ちや挑戦を空想させて、見る者に明るい未来の可能性を予感させる。

 二〇〇〇年にスタートした彫刻フェスタで公開制作された、たくさんの石や鉄の彫刻作品が設置された公園の対岸には保育園があって、子どもたちが毎日散歩にやって来る。「その子どもたちが遊べるような、この場を体験するような、造形遊具っぽいところがあってもいいなぁと考えたんです。作品が完成してから、保育園の子どもたちが船長や海賊の役目を決めて遊んでいる、という話も聞きました」と藤井さんは話す。

 舟の甲板や船首の部分は四、五年前に一度修理をしたが、その後、船体を支える太い角材の腐食が進んだ。完成から十五年を経て、大掛かりな解体修理が必要になったという。

 藤井さんは、「構造的なこともあるだろうけど、腐食が進んだ一番の理由は、酸性雨だと思う」と話す。野原さんと二人、十月九日に作業を始めた。午前十時から午後一時まで、雨や雪が降らない限り、毎日現場に出る。形や構造は変えずに、木の部分を鉄材に取り換える予定だ。

 材料費は出るが、作業はボランティア。「作った責任があるからね」と言葉少なに語る藤井さんと野原さん。十一月十日までには修理を終わらせたい考えだ。それまで暖かい日が続くことを祈ろう――。