「小熊秀雄を『しゃべり捲れ』講座」が二十二日夜、ときわ市民ホールで開かれた。

 現代詩集の全国公募賞・小熊秀雄賞を運営する市民実行委員会(橋爪弘敬会長)の主催。旭川ゆかりの詩人、小熊秀雄(一九〇一―一九四〇)の作品や人となりをもっと市民に知ってもらおうと、小熊の研究者や郷土史家らを講師に招いて開いている。

 二十九回目の講師は、小説家の石川郁夫さん。一九三七年(昭和十二年)、礼文島生まれ。小熊賞の最終選考会で司会を務めている。

 三十九歳で病死した小熊は、詩人や童話作家、画家として多彩な才能を発揮したことで知られるが、石川さんは、小熊の小説を取り上げた。当時の旭川新聞の記者時代に書いて紙面に掲載された八編の短い小説を童話との比較で解説。そして上京後に執筆し、戦時色が濃くなる時勢の中で発表される機会がなかった幾編かの作品を朗読を交えて紹介した。

 昭和十二、三年に書かれたとみられる小説『徴発』は、中国で日本人の新聞記者が、富裕な農民の家に上がり込んで金を払って仏像を奪おうとする物語。「戦争を仕掛けて行った側の精神的敗北をきちっと描いている。昭和十年代、リアルタイムに加害者としての日本人を捉えていたということ。日本が侵略者、加害者として描かれるようになるのは、戦後二十年も経ってから。小熊の先見性が見て取れる」と石川さんは解説した。