三浦綾子作品の中で、層雲峡、天人峡が舞台の一つとして出てくる作品に注目した企画展「三浦綾子サスペンス 層雲峡・天人峡に燃ゆ」が三浦綾子記念文学館(神楽七ノ八)で開催中だ。

 層雲峡・天人峡は「氷点」をはじめ、「雨はあした晴れるだろう」「果て遠き丘」「毒麦の季」「自我の構図」「積木の箱」で舞台の一つとなっている。また層雲峡は綾子・光世夫妻にとって新婚旅行の旅先でもあり、特別な場所と言える。

 「氷点」では、徹と陽子が一つの部屋で枕を並べるシーンの舞台が層雲峡だ。「氷点」はこれまでに七回テレビドラマ化されている。会場には一九六六年(昭和四十一年)のドラマ化を特集した雑誌アサヒグラフが展示されていて、陽子を演じた女優・内藤洋子の紹介記事などを読むことができる。また「自我の構図」は三回テレビドラマ化され、一九七〇年(昭和四十五年)には「愛の誤算」のタイトルで放映された。その脚本も展示している。

 企画タイトルに「サスペンス」とあるが、三浦綾子はいわゆる推理小説を書いていない。企画を担当した同館の難波真実さん(44)は「テレビのサスペンスものといえば、断崖絶壁から見下ろす光景が付き物です。しかし綾子さんが層雲峡・天人峡に触れた作品には、渓谷を見上げる視点で捉えた表現が目立ちます」「綾子さんは、人間は追い詰められた時の心の向き方が大事だと考えたのだと思います。自分の中に閉じこもらず、上を見上げれば、そこに道は必ず開ける、と伝えたかったのではないでしょうか」と企画の意図について話している。

 同展は二〇一八年(平成三十年)三月十八日(日)まで。午前九時~午後五時。入館料は一般五百円。問い合わせは同館(TEL69―2626)へ。