旭川ゆかりの詩人小熊秀雄(一九〇一―一九四〇)作品の朗読会が一月二十八日午後、喫茶「ブラジル」(三ノ八、3・8小路)で開かれた。小熊秀雄賞市民実行委員会(橋爪弘敬会長)の主催。

 十六回目の朗読会。今回の会場は、昭和の懐かしい雰囲気が漂う喫茶店。旭川西高の演劇部員が小熊の代表作の一つ、『飛ぶ橇―アイヌ民族の為めに―』を群読するということで、五十人の観客で埋まった。

 この朗読会が企画されるまで小熊秀雄の名前も知らなかったという全員が女子の、高校一年生五人、二年生三人。実行委員の一人で、アマチュア劇団「劇天壌」を主宰する石井ひろみさんの、三回にわたる厳しく丁寧な指導を受けて見事に変身を遂げた。

 演出家の松井晶彦さんが、背景の映像と照明を担当し、五十人が耳を澄ませる中、樺太アイヌのイクバシュイ、日本名・四辻権太郎の物語、二十四章、八百行に及ぶ長編叙事詩の群読が始まった。

 八人は、時に鳥を打つ銃声が山にこだまする情景を見せ、時に橇を曳いて雪の上を疾駆する犬たちの吐く息を聞かせる、迫真の朗読で、四十五分間、聴衆を小熊の作品世界に引きずり込んだ。

 朗読が終わると、しばらく拍手が鳴りやまなかった。部長の竹村瑠々伽さん(二年・17)は、「少し失敗したところもあるけど、自分たちが今できる、精一杯の朗読ができたと思います」、藤田遊歩さん(同)は、「いっぱいの人が私たちの朗読を聞きに来てくれて、すごくうれしかった」と笑顔で話した。