元文科省事務次官・前川喜平さんの講演会が二月二十八日、市民文化会館小ホールで行われた。旭川に公立夜間中学をつくる会(中島啓幸代表)の主催。会場は約三百人の市民で埋まった。

 前川さんは、安倍晋三首相が加計学園の獣医学部開学を不正に後押ししたとの疑惑に言い逃れで責任を回避したため、事実を持って反論し追及する行動に出た元官僚として知られている。

 演題は、「いじめのない学校~夜間中学と日本の教育の未来~」。前川さんは文科省在職時代、年齢や国籍を問わずに夜間中学で学ぶ機会を保障した「教育機会確保法」に深く関わり、退官後は福島市と厚木市(神奈川県)の自主夜間中学で学習支援のボランティアをしていることなどをもとに話した。

 前川さんは、戦後から現在までの夜間中学の変遷について話を始め、不登校といわれる中学生が全国で十二、十三万人いるといわれる現状で、就学の機会を与えられていない子どもたちが数多くいることに、「不作為の責任」と文科省の姿勢を批判。

 「憲法二十六条の『教育を受ける権利と義務教育』は、国はすべての人に無償の教育を保障する義務を負うと解釈すべき。だが実際は多くの人たちが、この国の義務から置き去りにされている。学び直しの機会となっているのが公立夜間中学だ」と力説した。

 公立夜間中学は現在、八都府県に三十一校が設置されている。二〇一六年に制定された「教育機会確保法」のもと、文科省は都道府県に最低でも一校の公立夜間中学の設置を推進している。

 前川さんは「この法律で都道府県にも国の補助金が出るようになった。広い北海道の場合、道によるものと、これまで活動してきた自主夜間中学が中核となり、周辺自治体を取り込んだ広域で設置する方法がある。この法律を絵に描いた餅に終わらせないようにしなければならない」と道内での公立夜間中学の設置を訴えた。