「井上靖 愛蔵品展Ⅱ―思い出の人と旅から」が十四日(土)から、井上靖記念館(春光五ノ七)で始まる。

井上靖(一九〇七―九一)は京都大学で美学を専攻し、大阪毎日新聞社では主に美術担当の記者として活躍。美術に造詣が深い井上靖の応接間には、様々な美術品が飾られていた。今展では、同館の所蔵品のほか、個人蔵の美術品を井上靖の文章とともに展示する。

陶芸家、河井寛次郎(一八九〇―一九六六)作の硯(すずり)は、旭川で初めて展示される。井上靖は新米の記者として取材で河井宅を訪れ、寛次郎の人柄に魅了されて以来、長く交流した。硯に使用した形跡はないが、井上靖が書斎でこの硯を撫でている写真が館内に展示されている。

漆芸家、堂本漆軒(一八八九―一九六四)作の吸物椀も展示する。漆軒は、井上靖の妻ふみの従姉妹である春子の夫で、弟は日本画家の堂本印象。この椀は印象が下絵を描き、漆軒が漆の仕事をしたものだ。松竹梅が描かれていて、正月などに井上家で使用されていた。

 このほか、洋画家の須田国太郎(一八九一―一九六一)によるスケッチ(写し)と、須田が表紙のデザインをした同人誌『聖餐(せいさん)』も展示する。また、中国・蘇州を旅した際に持ち帰った刺繍や、シルクロードの旅で入手した青釉藍彩文碗などが展示される。

七月八日(日)まで。月曜休館(祝日の場合は翌日休館)。午前九時~午後五時。観覧料は一般二百円、高校生百円、中学生以下無料。問い合わせは井上靖記念館(TEL51―1188)へ。

井上靖記念館は今年で開館二十五周年を迎えた。今年度は、十月下旬に井上靖の長男、修一氏(筑波大学名誉教授)を迎え、「登山と井上靖」がテーマの講演会を行うなど、いくつかの周年記念事業を予定している。