「ハゴロモホトトギス」という野草をご存知だろうか。七月、東川町の天人峡温泉地区にひっそりと咲く黄色い花だ。同町大雪山アーカイブスの職員から「町民にも知られていない野草がある」と聞き撮影に出かけた。

 この職員によると、命名者は北海道の植物分類の先覚者・館脇操博士。日本植物学の泰斗・牧野富太郎の米寿を祝う記念誌に新種発見をお祝いとして原記載されたという。

 北邦野草園の初代園長・吉田友吉さん(故人)が「自生地は関係者以外は秘匿すべきである」と温泉関係者に伝えたことから、人々の口にのぼることはなく、多くの町民も知らない野草なのだそうだ。

 大雪山国立公園パークボランティア連絡会の黒田忠会長は「かつては数多く見られました。でも、山道整備のため刈られたことが主原因だと思いますが、本当に少なくなっています。開花期間は一週間ほど。可憐な花は山道を行く人たちの心を和ませます」と話している。