自主上映活動を続けて来た「旭川映画村」(多田裕哉代表)の最後の上映会が二十三日(日)、シアターカンダ(三ノ八・神田館三階)で行われる。

 二十八年間にわたり百十四回の上映会を開催してきた同会が選んだ最後の作品は、『家へ帰ろう』(二〇一七年・スペイン・アルゼンチン、九十三分)。

 物語は――。アルゼンチンに住む八十八歳の仕立屋アブラハムは、施設に入れようとする家族から逃れ、ポーランドへ向かう旅に出る。目的は、七十年前に、ホロコーストから命を救ってくれた親友に、自分が仕立てた“約束のスーツ”を渡すこと。

 飛行機で隣り合わせた青年、マドリッドのホテルの女主人…、旅の途中で出会う人たちは、自然体でアブラハムを手助けする。アブラハムは親友と再会できるのか、最後の旅に「奇跡」は訪れるのか――。
 旭川映画村は、一九九〇年、永山サティを会場に、映画評論家・白井佳夫氏を招いて始まった「映画サロン」がきっかけで誕生した。

 旭川で上映されていない、質の高い映画を市民に観てもらうのが目的だった。九二年には、『コルチャック先生』を初めて映画館(旭川劇場・当時)で上映し、大きな反響を読んだ。以来、年間四回ほどの上映会を企画、開催し続けて来た。

 旭川の映画館が次々に閉館し、現在はシネマコンプレックスが三館あるのみ。観客動員数が少ない映画は、札幌に出かけるしかない状況だ。

 映画村のスタート時から関わり、代表も務めた長原隆雄さん(65)は、五年ほど前、病気を患ったこともあり、定年退職と同時に活動から遠ざかった。会が活動を終えることについて――。

 「さみしいですが、多田君はよく頑張ったと思います。大変だったことでしょう。シネコンはどこも、観客が入る、同じ映画を上映します。映画村の活動が今こそ生きると思うのですが、それも時代の流れでしょう。僕も、シネコンにさえ、行けなくなってしまいました。最後まで関わってくれた方たち、本当にご苦労さまでした」

 『家へ帰ろう』は、午前十一時、午後一時半、午後四時の三回上映。前売りチケットは、千二百円(当日千五百円)、高校生以下は千円(当日のみ)。冨貴堂各店、こども冨貴堂、ジュンク堂書店旭川店などのほか、あさひかわ新聞(八ノ七)でも扱っている。
 問い合わせは、事務局(TEL23―3623)へ。